至上最幸の恋

「気がはえぇな。まだ男か女かも分からないだろ」
「どちらも欲しいので、がんばります!」

 エリサとの会話は、相変わらず少し噛み合わない。だから楽しいんだ。

「この子が生まれるのは、春ですね」

 エリサが、まだふくらみの目立たない腹に手を当てる。

 子どもには、植物にちなんだ名前をつけたい。父が手入れしていた庭を眺めながら、ふとそう思った。

「……女の子なら『さくら』かな。平仮名で」
「まぁ、かわいい。男の子なら、どうしますか?」

 男なら……「楓」もいいな。秋のイメージが強いが、花は4月から5月に咲く。
 しかし、少し中性的かもしれない。女の子に間違われるかもしれないし、どうせなら男らしい名前にしよう。

 時期に関係なく、花言葉から考えてみるか。……それなら、あの花がいいな。

「……桔平はどうだ? 桔梗の桔の字だ」
「春のお花ではありませんよね?」
「ああ。花言葉で選んだ。誠実、気品、それから……永遠の愛」
「永遠の愛……とっても素敵です! では、女の子ならさくら、男の子なら桔平ですね」

 エリサがオレの手をとって、大切な命が宿るところへ導いた。
 オレたちの子どもが、ここで生きている。名前が決まると、妙に実感が湧いてきた。
 
 家族を見送ったあと、また新しい家族を迎えようとしている。人生とは、こういうものなのかもしれない。
 いつかオレがいなくなったあとも、きっとこの子たちが命をつないでいく。