至上最幸の恋

 エリサには若い女性のファンが多い。モデルとピアニストを両立させ、さらに結婚という幸せまで手にすれば、確かに憧れの的になるのだろう。

 それに、芸能人ではなく、一応は文化人であるオレと結婚することにもメリットがあるそうだ。そのあたりはよく分からないが、オレとしては、自分の離婚歴がさほど問題にならなかったことがありがたかった。

 しかし、トントン拍子に進んだのはそこまで。そのあとは、オレもエリサも仕事に追われた。

 エリサが多忙なのは、もともと分かっていたことだ。ただ、結婚を決めたころから、不思議なほどオレの仕事の流れも変わっていった。

 以前から出品していた絵が次々と受賞を重ね、取材や制作の依頼が相次いだ。
 桂木さんのもとにも、国内外から多くの問い合わせが寄せられているという。それまで積み重ねてきたものが、一気に芽吹いたようだった。

 海外の著名な映画俳優が、好きな日本画家としてオレの名を挙げたことも大きかったらしい。
 そこからオレが「有名画家」と呼ばれるようになるまで、さほど時間はかからなかった。

 結局、入籍したのは11月。エリサの全国ツアーが終わるのを待ち、ふたりで区役所へ婚姻届を提出した。

 その後、事務所からマスコミ各社へエリサの結婚が伝えられると、芸術に関心がない人間にも「浅尾瑛士」という名前が知られるようになった。