至上最幸の恋

「覚悟を決めてきてくれたのは、正直嬉しい。でも感情に流されたくはないんだ」

 逸る気持ちを抑えるように、ゆっくりと言葉を選んだ。

「オレはなにを言われてもいいが、エリサは人気商売だ。きちんと順序は守らねぇと、イメージにも影響する。桂木さんから聞いたが、全国ツアーも控えているんだろう?」
「はい……」
「正直、突っ走りたい気持ちはある。でもオレは、エリサを大事にしたい。ただ、それだけだ」

 エリサに話しているようで、ほとんど自分に言い聞かせていた。

 一度気持ちを自覚すると、自制するのがどうにも難しい。エリサの表情やしぐさのひとつひとつが、愛おしくて仕方ない。

 だからといって、勢いに任せるのは違う。エリサに対しては、常に誠実でいたかった。

「順序……というのは、いわゆるABCというものですね?」

 真剣な表情で、エリサが言った。

「……なんだそれは」
「えっと、雑誌に書いてありまして……恋愛のABCといって、その……Aはキスで……Bは」
「あぁ、分かった。それ以上は言わなくていい」

 そういうことか。聞いたことくらいはある。
 しかし、オレが言う「順序」とはそういうことじゃない。やっぱり少しずれているな。

「エリサ。オレが言う順序ってのは、ご両親への挨拶や、事務所への報告を」
「私……私は、順序なんて気にしません」

 珍しく、エリサがオレの言葉を遮った。その瞳には、涙が浮かんでいる。