至上最幸の恋

 その視線の先には、父と母の遺影が並ぶ仏壇がある。

「……手を合わせても、よろしいでしょうか?」
「ああ」

 エリサはゆっくりと立ち上がり、仏壇の前に座った。そして両親の写真を見つめたあと、静かに手を合わせる。

 その姿を見た瞬間、なぜか涙がこみ上げてきた。

 父が亡くなったときも、葬儀のときも、涙は出なかったのに。悲しみなのか、安堵なのか……自分でも、この感情がよく分からない。
 ただ、エリサを父に……両親に会わせたかった。そう強く思った。

 しばらく手を合わせたあと、エリサは再び居間の座布団に腰を下ろした。

「すみません。私、お供えするものをなにも持ってきていなくて……」
「いや、ありがとう。来てくれただけで十分だ。そうだ、なにか飲むか?」

 目が潤んでいるのを誤魔化すように立ち上がり、台所へ向かう。

「えーっと、緑茶……は、カフェインが入っているか。あぁ、麦茶があるな」
「私が淹れますわ。瑛士さんは、お風呂へ入ってください」

 すぐにエリサがあとを追ってきて、やかんを手に取る。

 そういえば、風呂に入るところだったな。すっかり忘れていた。
 ここはエリサに甘えて、ゆっくり浸かってくるか。

 2階の自室へ着替えを取りに行ったあと、ようやく湯船に身を沈める。
 ゆずの香りに包まれると、張り詰めていた気持ちが少しずつほどけていった。