至上最幸の恋

 言葉を交わす必要はなかった。エリサの想いが、痛いほど伝わってくる。

 雨の中、ここまで来てくれた。暗い海の底へ沈んでいたオレの心を、優しく照らすために。

 やっと気がついたよ。オレはいつも、エリサに救われていた。
 ウィーンで出会ったあの日から、エリサの眩しさが、オレの世界を色鮮やかなものにしてくれていたんだ。

「……寒くないか?」
「大丈夫ですわ」

 しばらく抱き合ったあと、そっと体を離すと、エリサが微笑んだ。

 しかし、髪も服もずぶ濡れになっている。さすがにこのままにはしておけない。

「ちょうど風呂を溜めていたんだ。ゆっくり入ってこい」
「お風呂、ですか?」
「ああ。着替えはオレのものでいいか?」
「着させていただきたいです!」

 エリサが、なぜか目を輝かせる。

「んじゃ、持ってくるわ。下着は……さすがにねぇんだけど」
「大丈夫です。替えは持参しておりますから」

 ……持参? 女性は、替えの下着を持ち歩くものなのか。とりあえず、替えがあるのなら安心だ。

 エリサのワンピースは……これは家庭で洗濯できるものなのか? いや、無理だよな。レースだし。

「瑛士さん、どうかしましたか?」

 思わずワンピースを見つめて考え込んでしまった。

「あ、いや。脱いだ服は……ひとまずハンガーに掛けておいてくれ」
「はい、ありがとうございます」

 エリサを洗面所まで案内し、自分が着るはずだった部屋着を置くと、静かに扉を閉めた。