至上最幸の恋

「はい」

 ひとまず、玄関の扉越しに応じる。

「あ、あの、夜分に申し訳ございません」

 聞こえてきた声に、思わず駆け寄って扉を開けた。
 そこには、ずぶ濡れになったエリサが、体を震わせながら立っていた。

 どうしてここにいる。そう問いかけようとしたが、声が出ない。

 そうか、慧から聞いたのか。離婚のことも、父のことも、すべて聞いたのだろうか。

 いや、そんなことよりも、早く髪や体を拭かないと。このままでは、風邪を引いてしまう。

「突然、申し訳ございません。あの……」
「とにかく入れ。タオルを持ってくるから」

 エリサを招き入れ、洗面所へ向かおうと踵を返したところで、シャツの裾を掴まれた。

「そ……そばに」

 消え入りそうな声だった。
 それでも、瞳には強い光が宿っている。

「ずっと、瑛士さんのおそばにいるために、来ました」

 今度は、はっきりとした声だった。

 真っすぐで透き通ったグレーの瞳。雨に濡れて輝くブロンド。抜けるように白い肌も、桜色の唇も、あのころと変わらない。

 突然、世界が色づく。

 気がつくと、エリサの体を抱き寄せていた。
 雨に濡れた体は、ひどく冷え切っている。それなのに、触れた場所から温かさが広がっていくような気がした。

 エリサはなにも言わず、ただオレの背中に手を回した。

 自分が求めていたものが、ようやく分かった。慧も律も、とっくに気づいていたのだろう。