至上最幸の恋

 学費は奨学金でなんとかなっているが、これだけアルバイトをしながら成績を維持するのは至難の業だ。我ながら、よくやっていると思う。

 親からの援助は一切ない。そもそも、東都藝大への進学も強引に認めてもらったんだ。大学院の学費援助など、頼めるはずもなかった。

「瑛士さんは自立なさっているのですね」

 エリサが、じっと見つめてくる。

「もう25だし、自立するのは当たり前だろ」
「私は留学費用などすべて出してもらっていますが……父が懸命に働いて得た大切なお給料を、有意義に使えているのか不安です」

 なんだ、筋金入りのお嬢様かと思いきや、案外そうでもないのか。

 突拍子もないところはあるが、他人に対する礼儀はきちんとしているし、育ちのよさが滲み出ている。オレとは大違いだな。

「10代のうちは、親に甘えていてもバチは当たんねぇよ」
「そうでしょうか?」
「日本から遠く離れた国で、ひとりで頑張っているんだろ。十分、立派だよ」

 母国とは言語や文化が異なる国で、親元から離れて生活をする。それは思った以上に大変なことなのだろう。

 ホームシックになったとしても、すぐに帰省できる距離ではない。オレに話しかけたのは、もしかすると郷愁に駆られたからなのかもしれない。