至上最幸の恋

「夫婦ってのは、支え合うものだろ。オレは律の支えがあったから、絵を描き続けることができた。でもオレは自分のことばかりだった。だから、律の不安や弱さに気づけなかったんだ」

 こうして本音を語り尽くしたら、元の関係に戻れるだろうか。一瞬そんな考えが過ったが、すぐに振り払った。

 オレはきっと、同じことを繰り返す。絵が人生のすべてだからだ。熱中すればそれしか考えられなくなるし、自分の寝食すら疎かになる。
 
 そんな人間が、家庭など築けるわけがなかった。
 律と結婚したことが間違いだったわけじゃない。オレは、誰と結婚してもこうなっていただろう。

「私は」

 しばらくして、律が口を開いた。声がかすれている。

「あなたに、画家を諦めてほしいなんて思っていない。ただ、不安定な道を、心から応援することもできなくて。いろいろ考えていたら、不安ばかり大きくなって……」

 夫が不確かな夢を追いかけているのだから、不安にならないわけがない。
 絵に対する想いや、将来のこと。ふたりで会話を重ねていれば、こんなすれ違いにはならなかったかもしれない。

「会話が足りなかったな」
「……そうね。あなたも私も、口下手だから」

 律は、自嘲するように微笑んだ。
 オレたちは似すぎていたのかもしれない。なにもかも自分の中に押し込めてしまうところが。