至上最幸の恋

 きっとお互いに一時的な感情で終わるはずだ。
 とはいえ、彼女の笑顔がオレの心の暗い部分に光を灯してくれているのは間違いない。

 旅の思い出としてはいささか眩しすぎるかもしれないが、それでも、その光の中に飛び込んでみようと思った。

「瑛士さんって、とても美味しそうに召し上がりますね」

 エリサが満面の笑みを浮かべながら、オレの顔を覗き込んできた。

「そうかぁ?」
「ええ。しっかり大切に味わってくださっている感じがして、とても嬉しいです」
「あー……いつも腹を空かせているからかもな」

 一体オレは、どんな表情で食べているのか。なんだか気恥しくなってきたので、咳払いで誤魔化した。

「お忙しくて、お食事の時間が取れないのですか?」
「金がねぇんだよ。家賃と画材で、あっという間にアルバイト代が消える。日本画の画材は高くてな」
「瑛士さんは、日本画を描かれるのですね」

 そういえば、エリサはオレのことを「画家」としか認識していなかったか。スケッチブックを見ただけでは、ジャンルは分からないもんな。

「ああ。日本画は岩絵具ってのを使うんだけど、それが高いんだよ」
「岩絵具……ですか」
「天然の鉱石を砕いて作るから、15gで6千円するものもある。だから、食費に金を割く余裕がねぇんだよ」

 講義と制作と睡眠の時間以外は、ほとんどアルバイトをしている。それでも財布の中身は常にスカスカだった。