至上最幸の恋

 普通に考えれば、おかしな話だ。お互いの名前すら知らないのに突然求婚され、さらにまた会う約束までしている。18歳の少女からすれば、7歳上のオレなどオッサンにしか見えないだろうし、どこに惚れる要素があったのか分からない。
 
 しかしあの透き通った瞳には、揶揄するような色は一切見えなかった。嘘をついているとも思えない。結婚はさすがに飛躍しすぎだと思うが、彼女は本当に純粋で、真っ白だと感じる。
 
 この出会いが、なにを意味するのかは分からない。考えても無駄なことだ。ただ、彼女の気が済むまで付き合うと決めたからには、真摯に向き合おうと思った。
 
 スケッチを始める。昨日と同じような天気だが、景色は違って見えた。

 例えば同じ空を見て絵を描いたとしても、人によってさまざまな「青」がある。まるでブルーサファイアのような深い色だったり、南の海を閉じ込めたようなパステルブルーだったり。
 それは心の持ちようで、瞳にさまざまなフィルターがかかるからなのだろう。

 ひとめ惚れというものも、きっとそんな感じだ。フィルターが変われば、見え方が変わる。それなのに恋心が永遠に続くことなど、ありえるのか。

 そんなことを考えながらスケッチをしていると、視線の先に、ふわふわと揺れる金色の妖精が現れた。