至上最幸の恋

「桂木さんたちは、大丈夫かしら」
「大丈夫だろ。慧があとでタクシーを呼ぶと言っていたし。あんなにはしゃぐとは、思っていなかったけどな」
「本当に嬉しかったのね、あなたの受賞が」
「ありがたいことだよ」

 桂木さんが大喜びする姿を見て、ひとつ高い山を登りきったような達成感を覚えた。

 ただ、これで終わりではない。ここからが大事だ。
 すでに、いくつか制作の仕事をもらっている。明日からまた、画面と向き合う日々だ。目をかけてくれる桂木さんのためにも、さらに励まなければ。

 もっと名が知られ、画業が安定したらドライバーの仕事を辞める。そのときはきっと、律も納得してくれるだろう。

「明日は、また部屋にこもるの?」
「ああ、そうだな」

 明日は休みなので、制作に没頭できる。磯崎のおかげで、着想がどんどん湧いてきそうだ。

 この夜道の景色でさえ、いつもと違って見える。
 いや。同じ景色なんて、どこにもない。この一瞬一瞬が、奇跡の積み重ねだ。

 その瞬間を切り取って、永遠にする。画面の中で生き続ける景色を描きたい。そう強く思った。

「……エリサさんって」

 ふいに、か細い声で律が言った。
 なかなか次の言葉がこないので振り返ると、律はどこか取り繕ったような笑顔を見せた。