至上最幸の恋

 桂木さんと幸太郎は、すっかり夢の世界の住人になっていた。寝言といびきがハーモニーを奏でている。

 いつの間にか、テーブルの上がきれいになっていた。磯崎と話し込んでいるあいだに、律とエリサが片付けてくれたらしい。いい時間になってきたし、そろそろ宴も終わりか。

「瑛士さん。このたびは、本当におめでとうございました」

 磯崎が車を取りに行くと、エリサは改めてオレに頭を下げた。

「なんとかスケジュールを調整して、展示を観に伺いますね」
「無理しなくていいぞ。いずれ手元に戻ってくるし」
「でも、このあとは全国の巡回展に出品されるのですよね?」
「あぁ、まぁそうだな」

 日展は東京の本展のあと、大阪や名古屋など全国で巡回展が開かれる。作品が戻ってくるのは、半年以上先だ。さすがに、そこまでは待てないか。

「早く拝見したくて、うずうずしています。いますぐ美術館に忍び込みたいくらいですわ」

 目が真剣だ。本当にやりそうだな。しかしオレも、彼女に早く観てもらいたかった。

「依頼主に満足してもらわねぇと、制作は完了しないからな。先に日展に出しちまったけど」
「ふふ、そうですわね。私は依頼主でした」

 エリサが胸を張る。
 少女のようなしぐさが妙に似合うのは、彼女がどこまでも真っ白だからだろう。