至上最幸の恋

「子どものころから父の写真を見てきたし、カメラが遊び道具でした。だから、カメラマン以外の道を考えたことはありません。ただ」

 そこで言葉を切ると、磯崎は小さく息を吐いた。
 誰も口を挟まない。慧でさえ、グラスを持つ手を止めている。

「父は言っていました。自分の夢は、この世から戦場カメラマンという職業がなくなることだと。そして僕には絶対に戦場カメラマンにはならないでほしい、美しい夢の世界を写してほしいと」

 店の空気が、いつの間にか磯崎の話に引き込まれていた。
 彼の魅力は、上辺だけではない。こういう背景があるからこそ、多くの人を惹きつけるのだろう。

「ご立派なお父様ですね」
「はい、尊敬しています」

 少年のような顔で、磯崎は頷いた。その表情は、先ほどまでの洗練されたカメラマンの顔とは別人のようだった。

「父と同じ道を進みたいという気持ちは、もちろんありました。ただ母のことを考えると、僕まで戦地に行くことなどできず……それなら、父の言う美しい夢の世界を、とことん追求しようと決めたんです」

 これまでは、ぼんやりとした感情だった。しかしいま、はっきりとこの男に好感を抱いた。
 美しい夢の世界。いいじゃないか。オレもぜひ、見てみたい。