至上最幸の恋

「瑛士さんの絵は、これからもっと多くの方の心に届きますわ。奥さまも、そう思われますでしょう?」
「えっ?」

 いきなりエリサに水を向けられ、律はうわずった声を漏らした。

「え、えっと……日本画のことは、まったく分からなくて……綺麗だなとは、思いますけど」
「ええ! 瑛士さんの絵は、とてもとても綺麗です!」

 エリサがまた身を乗り出したので、磯崎は少し体をのけ反らせている。
 このままだと、エリサの暴走で律がパンクしてしまうな。話題を変えるか。

「磯崎さんは、なぜカメラマンを志したんですか?」

 律をエリサの視線からさりげなく外すように、少し前かがみになりながら磯崎に目を向けた。

「僕の父も、カメラマンなんです」

 そう言うと、磯崎は少し目を伏せ、コーヒーをひと口飲む。なにをしても絵になる男だ。

「同じ道を進んだんですね」
「ジャンルは違います。父は報道カメラマンで、おもに紛争地を取材しています。イランとイラクの戦争にも行っていましたし、いまはシエラレオネにいるそうです」
「シエラレオネ……」

 反政府武装集団の蜂起で内戦が続いている、西アフリカの国だ。
 報道カメラマンにもいろいろいるが、彼の父親はいわゆる「戦場カメラマン」というやつか。