至上最幸の恋

 女性の扱いは、もともと不得手だ。しかも相手は10代。余計に生態が分からない。

 付き合ってもいない男から貰うものなのだから、形に残らないほうがいいだろう。しかしクッキーを焼いてきてくれる相手に、店で買った菓子を返すのはありなのか?

 分からない。なにも分からない。ひとまず、市民公園へ向かう道すがら考えることにした。

 ガイドブックの地図は見ずに、方角だけを頼りに歩く。もちろん、近づかないほうがいい場所などは事前に調べているが、オレの旅は基本的に行き当たりばったりだ。

 昨日市民公園へ行ったのも、なんとなく足が向いたからだった。なにかに呼ばれている。旅の道中で、たびたび感じることだ。冗談のような話だが、そうして足を運んだ先では、面白い出会いに恵まれることが多い。

 いまでも手紙のやり取りが続いている縁もあるが、大半が一期一会だ。それも旅の醍醐味だと思っている。

 気がついたら、昨日は通らなかった道を歩いていた。そして気になる雑貨屋を見つける。
 贈りたいものと自然に出会える、か。本当にそうかもしれない。店の中で、なんとなくエリサの顔が思い浮かぶものを見つけた。
 
 それを買って市民公園へ向かい、昨日と同じように、ヨハン・シュトラウス像の近くにあるベンチに座る。そこでふと、本当にエリサは来るのだろうかと思った。