至上最幸の恋

「磯崎さん。コーヒーを淹れましょうか?」

 慧が気さくに話しかける。そうか、車だから酒は飲めないのか。

「ありがとうございます、お願いします」
「こんな時間にコーヒーを飲まれて、眠れなくなりませんか?」
「まだ21時前だし大丈夫だよ。それに、カフェインには鈍感でね」

 心配そうなエリサに、磯崎が微笑んだ。

「エリサちゃんは、夕方以降はコーヒーを飲まないと言っていたよね」
「ええ。私はカフェインがよく効いてしまうので、15時以降は飲めませんわ」
「ちなみに僕はアルコールには敏感で、下戸なんです。ですから、浅尾さんやみなさんは、気にせず飲まれてくださいね」
「いや、実はオレも酒は飲めなくて」
「浅尾さんもですか」

 意外な共通点が見つかってしまった。オレはまったく飲めないわけではないし、旅先ではついその土地の酒を飲んでしまうが、酔いが回りやすい体質なので最近は控えている。

「まぁ。瑛士さんと磯崎さん、お揃いですね」
「はは、そうだね。浅尾さんとお揃いだなんて、光栄だな」

 エリサと磯崎のやり取りは、恋人か夫婦のような雰囲気だ。よく似合っている。醸し出す空気が、不思議なほど調和していると感じた。

 ふと、胸の奥に小さな引っかかりを覚える。
 ……なんだこれは。釈然としないものが、心の中に居座っている。

 だが、その曖昧な感情を、立ちのぼるコーヒーの香りがそっと押し流した。