磯崎の視線が慧へ向いたことに安堵したのも束の間、すぐにこちらへ戻ってきた。
「浅尾さんは、席がお隣でしたよね。休憩時間に、ホールをスケッチされていましたよね。」
サントリーホールの中に入ることなど滅多にないので、その美しい内装を記録しておきたいと思いスケッチブックを持参していた。
休憩時間に入ると磯崎は席を立っていたはずだが、オレが描いているのを見ていたのか。
「瑛士さんは、とても素敵な絵を描かれているんですよ!」
エリサが、子どものように弾んだ声で言う。あえて「画家」とは言わなかったのか。
いや、さすがにそれは考えすぎか。エリサが、オレの葛藤を知っているわけがない。どうも神経過敏になっているようだ。
「それはぜひ、拝見してみたいな。どこかのギャラリーに展示されていますか?」
「私のギャラリーにお越しいただければ、浅尾君の美しい風景画をご覧いただけますよ」
自分の出番だと言わんばかりに、桂木さんが磯崎に名刺を差し出す。
なるほど。これが、社交というものか。名刺ひとつ持たず、肩書きも名乗れない自分が、ひどく場違いに思えた。
「瑛士さん、瑛士さん」
磯崎が桂木さんと話している隙に、エリサが少し身を寄せて声をかけてきた。
「浅尾さんは、席がお隣でしたよね。休憩時間に、ホールをスケッチされていましたよね。」
サントリーホールの中に入ることなど滅多にないので、その美しい内装を記録しておきたいと思いスケッチブックを持参していた。
休憩時間に入ると磯崎は席を立っていたはずだが、オレが描いているのを見ていたのか。
「瑛士さんは、とても素敵な絵を描かれているんですよ!」
エリサが、子どものように弾んだ声で言う。あえて「画家」とは言わなかったのか。
いや、さすがにそれは考えすぎか。エリサが、オレの葛藤を知っているわけがない。どうも神経過敏になっているようだ。
「それはぜひ、拝見してみたいな。どこかのギャラリーに展示されていますか?」
「私のギャラリーにお越しいただければ、浅尾君の美しい風景画をご覧いただけますよ」
自分の出番だと言わんばかりに、桂木さんが磯崎に名刺を差し出す。
なるほど。これが、社交というものか。名刺ひとつ持たず、肩書きも名乗れない自分が、ひどく場違いに思えた。
「瑛士さん、瑛士さん」
磯崎が桂木さんと話している隙に、エリサが少し身を寄せて声をかけてきた。



