至上最幸の恋

「本日は、私の大好きなショパンの曲を中心にお届けいたします。心を揺さぶる、美しい曲ばかりです。どうぞ、最後までお楽しみくださいませ」

 そういえば初めて会ったとき、ショパンが好きだと言っていたな。

 あのころとの彼女とは、まったく別人だ。当時は心細さと必死に向き合っていたが、いまは自信と希望に満ち溢れているように見える。

 筆が止まってしまうのは、このせいなのか。
 オレが描きたいと思ったのは「あのころ」のエリサだった。しかし思いもよらぬ再会によって、自分の中にある彼女のイメージが揺らいでしまったのかもしれない。

 オレは一体、エリサのなにを、どう表現すればいいのだろう。
 そもそも、なぜ描きたいと思ったのか。一度、自分の心の底まで潜って、問い直す必要がありそうだ。

 粒の揃った澄んだ音色が、深く沈みかけた思考を断ち切った。
 流れるようなアルペジオが耳に心地いい。エリサの表情からも、心からこの瞬間を楽しんでいるのが伝わってくる。

 考えるのはあとだ。いまはただ、彼女の美しい世界に身を委ねよう。

 エリサが奏でる曲は、どれも一度は耳にしたことがあるような名曲ばかりだった。それだけ、ショパンが広く愛されているということなのだろう。クラシック初心者のオレでも、十分に楽しめる。