そして一日の業務を行い、流石に今日は家に帰らないとな……と重い足取りを引きずって家に帰ると、翔琉はすでに帰っていた。
「あれ?今日は早いね」
あれ…?案外普通に話してる私。さっきまで罪悪感で押しつぶされそうだったのに。後ろめたい、と言う気持ちが翔琉の顔を見て何故だか吹き飛んだ。
「うん、今日はどこか飯食いに行こうぜ」
「外食?どこへ?」
「うん、予約してあるから」
予約?何で急に。もしかして昨夜のこと勘づかれた?と不安がよぎったが
「その前にさ、これ」と翔琉は足元に置いた大き目の紙袋から少し大きめの花束を取り出した。水色を基調としたブルースターやでデルフィニウム、ネモフィラに混ざってカスミソウが品良く配置されている。
「え?」驚いておずおずとその花束を受け取ると
「今日、お前誕生日だったろ?」
「そっか……そうだった……」
この歳になるともう自分の誕生日すら忘れちゃうのかな。
健忘症にはまだ早い気がするけど。
「それからこれ」と翔琉はもう一つ小さな箱をスーツの上着の内ポケットから取り出し、それを両手で持つと箱の蓋を開けた。
そこには中央にダイヤをあしらった指輪が入っていて。
「え?え!」
ひたすら戸惑っていると
「結婚しよう」
「………え…」
正直、私の中に恋や結婚なんて無縁だと思ってたから、この発言には戸惑った。
「あ!いきなり過ぎだよな!お前だって今後の人生設計だってあるだろうし、返事は…その…急がないから。考えておいて。とりあえず食事、行こう!予約時間迫ってるし」
翔琉は早口に言い顔を逸らす。
その横顔が耳まで赤くなっていた。
言い慣れないこと言ってきっと緊張もしたんだろうな。
「ありがと。じゃぁご飯食べに行こうか」
これでいいんだ。これで―――
昨夜のことは事故みたいなもので。これからも翔琉と生きて行けば
―――いいのかな。



