先輩はアルバイトをしていたガソリンスタンドでそのまま社員になり、今もそこで勤めているという。
「何か腐れ縁的な?まぁ長い間やってたから仕事は分かるし、でも意外と試験が多くてそれが面倒」
「はは、先輩って昔から勉強嫌いでしたもんね」
「勉強が好きなヤツっているか?あ、美海か」
「私だって好きじゃないですよ。ただそれしか取り柄がないから」
ふふっと笑って先輩の肩に頭を預けると懐かしい先輩の体温を、香りを感じた。
やっぱり好きだ。
この手を離したくない。
でも、そうしたら今度は翔琉に傷を負わせることになる。
どうしたらいいんだろう―――
そんなことを考えていたら、いつの間にかうつらうつら。色々あって疲れたからだろうか。
私はまるで心地良い水に包み込まれるように眠りに落ちていった。
次の日の朝―――目を覚ますと、隣に先輩の姿はなかった。慌ててすぐ隣、先輩が横になっていたであろう場所に手を這わせると冷たいシーツの感触しかなかった。
先輩、どこ?
慌ててトイレやバスルームを覗いたがどこにも居ない。
何で―――
力なくソファに腰掛けると、テーブルの上にメモ書きが置いてあった。少し武骨な感じのする先輩の文字には見覚えがあった。
”美海、昨日はありがとう。
そしてごめんな。
俺にもきれいなものが欲しかったんだ。
それが美海、お前だったんだよ。
でも美海のきれいな世界をこれ以上俺の汚いもので染め上げるわけにはいかない。
美海にはきれいな世界できれいに生きて欲しい。
美海ならできる。
今までありがとう。さよなら”
先輩――――
私は震える手でメモ書きを手にしてぐしゃりと手の中で握ると、それを顔の前まで持って行って泣いた。
先輩―――私も先輩はきれいなものでした。あなたは決して汚れてなどない。
私の目には先輩はいつもキラキラと輝いて映っていました。
それは眩しいぐらいに。
先輩と過ごした日々、たくさんキスをして抱き合って。どれも全部美しい想い出。
私は―――あなたの居ない世界でこれからどうしたらいいのですか?



