私たちはお風呂の中で抱き合った。
いくら翔琉と曖昧な関係でも、セックスレスでもこれは立派な浮気だ。
それでも止められない。
水ほど冷たくはないがやはり水中は心地よい。忘れかけていた水の感覚。
不思議。いつもお風呂に入るときはこんな風に思わないのに。海李先輩と抱き合って入るとどこか懐かしさが蘇る。
罪の共有、と言うことなのかこの先何が起こるか分からない状態で、人間の生存本能がより強く発揮された気がして、私たちは激しく抱き合った。
私も歳だ。決して多くないけれどそこそこ経験を積んできた今、痛いとは微塵も感じずただ水の中に心地よく沈む緩やかな快感が波のように寄せては引いて寄せては引いてを繰り返している。
翔琉とのセックスも決して悪くないけれど、その何十倍と言える程ドロドロに互いの体や体温が溶け合って一つになった感じ。
こんなのはじめて。
行為が終わると二人ともすっかりのぼせていて顔が赤くなっていた。
「美海、顔真っ赤」と同じ色をした先輩が無邪気に笑って私の頬を優しく撫でる。わたしはその手に両手を重ねて頬を置いた。
お風呂を出て、バスローブのまま互いの髪を乾かし合い、この十年間の話をベッドの中で語りつくした。
「親父を―――何度も何度も殺したいと思った」
「………」
「でも…できなかった…たった一人の家族だし。こんなことに巻き込んでごめん。でも何故か美海の顔がすぐに思い出されて…」
「……うん」
「美海、俺を恨んでないのか?」
「―――正直、最初は恨みました。その後もうまく恋ができずフられてばかりだったんです。でも沙羅先輩に会って真実を知って―――」
「沙羅に会った?」
「まぁ……偶然でしたけど」
「ごめん……あの時はああするしかなかった。沙羅の卑劣さを恨んだよ。付き合ってるって言ったけど実際そうじゃない。あんな悪魔みたいな女と付き合えるわけがない」
そう―――だったんだ……
「ごめんな……そうなる前に守ってやれなくて……」
先輩はそっと私の前髪をかきあげた。
私はゆるゆると首を横に振った。
「あの時は―――やっぱりああするしか方法はなかったと思います。沙羅先輩にとって海李先輩はやっぱりオモチャだったわけですね」
「ああ、いつでも子供のまま成長しねぇの、あいつ」
子供―――……なんて可愛い者じゃない。あの女は魔女だ。
「今、付き合ってるヤツいる?」そう聞かれて、私はしばし無言になった。
それを肯定と取ったのか、先輩が深いため息をついた。
「そうだよな、美海みたいないい女放っておかないよなぁ」
いい女だなんて―――そんなこと言われる資格ない。
だって私、翔琉を完全に裏切った。



