一緒に暮らしている。食事も一緒。たまに気が合えばセックスもするし、二人きりで休日出かけることもある。けれど二人から一度も「付き合う?」と言う言葉が出たことがない。言葉一つで付き合ってるのか付き合ってないのか判別するのは難しいけれど、状況的には付き合ってるよね。
そのうちに料理が運ばれてきた。
沙羅先輩は運ばれてきた明太ソースのふわとろオムライスをスマホの写真に収めていて、私は無言でフォークとナイフを取った。
写真は翔琉や智花と出かけたとき撮ったりするが、今はそんな気分じゃない。
「あなたは何で海李が心変わりしたか知りたいんでしょ」といきなりど直球に聞かれ、割と厚さのあるローストビーフを切り分けていた私の手が止まった。
「あれはね、私が海李を脅したの。あなたが襲われている所、私動画を撮っておいたの。それをバラまれたくなかったらあなたと別れてって」
え――――
「………じゃぁ先輩の意思じゃなく」
「そ。私が仕向けたの」
沙羅先輩はまるでゲームか何かを楽しむようににっこり笑って、オムライスを一口口に入れる。
「その動画は……」
「海李に無理やり消されちゃった」先輩は小さくため息を吐き唇を尖らせる。
「あ……あんなことしておいて……犯罪ですよ。しかもそれをネタに海李先輩と私を引きはがすなんて…」
ぐっとナイフに力が籠るのが分かった。今すぐこの女を刺し殺したい衝動に駆られたが、そんなことをしてももう昔には戻れない。
「海李……先輩は今どうしてるんですか…?」かろうじて言えた言葉は随分間抜けだったと思う。
「さあ、知らなぁい」と沙羅先輩は長い髪の先を指でくるくると巻き付けいじっている。「だってあの後すぐ別れたしぃ」
「そんな……そんな無責任なことしないでください!」
我慢がならなくて乱暴にフォークとナイフを皿に置くと、私は立ち上がった。それぞれランチやランチ後のティータイムを楽しんでいた客が何事かこちらを見てきた。けれど知らないふりで私は続けた。
「私の……私の人生を青春を無茶苦茶にして楽しかったですか?」
「青春?何言っちゃってるの?笑える~」沙羅先輩はおかしなものを見る目つきで笑った。
この悪魔……
私は五千円札を取り出すとテーブルにバンと置いた。
「寂しい人ですね、あなたは。そうでしか人を操れない。
人を真剣に好きになったことがないでしょう?」
私が言い放つと沙羅先輩はここにきて初めて真顔になった。



