人魚のティアドロップ


と言うわけで、数日後翔琉は大き目のトランク一つ抱えて我が家にやってきた。

「言っとくけど、俺料理はできないからな」

前置きされて

「それは私がやるからいいよ。その代わり掃除はお願いね」

「おう」

それからと言うもの、日々は穏やかに過ぎていった。翔琉と同棲しだしてから同じ都心で働いていた智花に会った。言うまでもなく私が呼び出したんだけど。

高校生のときのようなファミレスではなく、居酒屋にしたのはアルコールが入ると喋りやすくなるかと思ったから。

智花と会うのは数か月ぶりだった。智花は高校生のときよりずっと大人っぽくなって美人にさらに拍車がかかり、街でよくナンパされたりモデル事務所から声が掛かったりで、それはそれで大変そうだったけれど。

――――
――

「え!翔琉と同棲!?」

何杯目かのビールを飲んだときに言ったとき、それでもいくらアルコールが入っていてもなかなか言い出せなかった。智花は翔琉のことが好きだったから。

しかし

「そっか~、とうとうそういう流れになったかぁ」と智花はどこか楽しそう。「翔琉両手をあげて小躍りしてるんじゃない?」

良かった。恨まれてはないみたい。

……ってこの反応からすると智花は翔琉が私を好きだったこと、知ってたんだな。それなのにずっと親友でいてくれて助けてもくれて、ホント凄い良い友達だよ。

「小躍り?そんな、ふつーだよ。普通」

そんなことを話していたら智花に電話が掛かってきた。

相手は高校時代から付き合っている先輩みたいで

「やだ!忘れてた!今美海と居るの」と智花は慌てている。

「どうしたの?」小声で聞くと、智花はスマホの受話口を手で押さえながら

「今日、付き合った記念日だったこと忘れてた。毎年お祝いしてたのに」

未だに付き合った記念日を大事にするのって智花っぽくないけど、彼が大事にしてるんだろうな。そう言うのって何だか憧れる。

「じゃぁ早く帰った方が……」と提案すると、

「ここに来るって」

え!

「二人の邪魔しちゃ悪いから私帰るよ」と言って席を立とうとすると「いらっしゃいませ~」と店員さんの声が上がって、うるおぼえだが見覚えのあるちょっと硬派な感じの背の高いスーツ姿の男性が暖簾をくぐってきた。

早っ!