翔琉のほんのり付けた男っぽい香水の香りに交じって、ポテチの塩味とビールの苦みがごちゃまぜになって唇に感じる。
口づけはすぐに離れて行った。
「で……出来心とかじゃ―――ないから」翔琉は静かに言った。
私は顔だけを上げて翔琉の次の言葉を待った。
「俺………ずっと美海が好きだった。小学生のときから」
そんな前から―――
「でも美海はあのちょっとチャラそうな先輩に夢中だったから」
ちょっとチャラそうって……海李先輩のこと?
「見た目はああだけど、誠実な人だったよ」
最後は―――誠実じゃなかったけれど。
今は思い出したくない。
想い出を塗り替えたくて、私は翔琉に抱き着いた。
「美海―――?」
翔琉が少し驚いたように手をどこへやっていいのか分からないと言った感じであたふたしているのが分かる。
こんなの―――卑怯だよ。翔琉の気持ちを利用して。翔琉が絶対断らないこと分かっていて。
意を決したのか翔琉の手が私の背中に回った。きゅっと抱きしめられ、私たちは二度目のキス。
映画が流れている中、私たちは抱き合いながら互いの服を夢中で脱いだ。
翔琉の筋肉は陸上をやっていたときから衰えていないようで細そうに見えるのに適度な筋肉がついている。
テレビの明かりだけを頼りに私たちは夢中で抱き合った。
―――――
――
朝、翔琉の裸の上にブランケットだけ掛けて私は朝食作り。一人暮らしが長いと意外と慣れるもので最初は何もできなかった私はチーズ入りのオムレツとボイルしたウィンナー、サラダとトースト、ヨーグルトを用意した。
翔琉はパン派だと言うこと、幼馴染だから知っている。変わってないといいけど。
コーヒーを立てていると
「ん……旨そうな匂い」と言って翔琉がソファから起きだしてきた。
「おはよ~ご飯できてるよ」
「え?マジで?」翔琉はソファの下に落ちたワイシャツを慌てて着るとスーツのスラックスも履いていそいそとダイニングの方へ向かってきた。
「こうゆうの、ちょっと憧れてた」翔琉はにこにこと笑顔だ。
「こんなことが?前にもなかったの?」
「や、付き合った女はいたけど料理苦手でさー、あんときはコンビニのサンドイッチだった」
そりゃまぁ……味気ないよね。
二人でダイニングを囲み
「翔琉は?今一人暮らし?」とトーストをかじりながら何気なく聞くと
「いや、まだ実家。この辺住みたいけどなかなかいい物件なくてさー。満員電車の通勤一時間はしんどいわ。俺も早く引っ越してー」
「じゃぁここで一緒に住む?」
私の発言に
げほっごほっ!翔琉は盛大にむせ、慌ててコーヒーでそれを飲み込んだ。
「へ?お前マジで言ってンの?」
「朝から冗談言う暇ない」とそっけなく言うと
「そ、そりゃ嬉しいけど…」
「嬉しいけど?」
「いや、迷惑じゃないかな、とか」
「翔琉も迷惑とか考える歳になったんだね」
ふふっと笑うと、
「あのなー、常識的に考えてそうだろ?」
「お互いフリーなんだし、問題ないじゃん」
「そ、そうだな」
翔琉は食事を再開させて
「お前の料理、毎日食えるんなら最高の提案だな」



