部屋は1LDKと言う間取りでバスとトイレ、独立洗面台がある。
「おー、部屋もきれいじゃん」
「そっかぁ?」私はソファに転がったぬいぐるみを少しだけ脇に避け二人分座れるスペースを作った。
翔琉は上着を脱ぎ、
「貸して、皺になるといけないから」と言ってハンガーに掛け、ハンガーラックに掛けると
「何か…慣れてる……?」
「あのねぇ、私こう見えても受付嬢。そりゃお客さんの扱いにも慣れるわ」
「お客さん……」翔琉はどこか不服そうだったけれど「座っていい?」と言ってソファに腰掛けた。
グラスに移し替えたビールで改めて乾杯。一気に飲み干すと
「良い飲みっぷりだな」と翔琉が目を開く。
「何よ、別にさっきはぶりっ子して飲んでたわけじゃないから」
「分かってンよ、お前とは付き合い長いし。周りに合わせて気ぃつかったんだろ」
そうなのだ。割り勘だと聞いていたから一人だけたくさん飲むわけにはいかず、周りのペースに合わせた。
いつだってそう。私は何も変わっちゃいない。周りに気を遣って誰かに合わせて、言いたい事も言い出せず。大好きだった海李先輩にもどこか気を遣ってた気がする。
でも翔琉や智花は違った。素の私を出せた。二人だけだよ。こんな私を見せられるのは。
それから私たちは撮りためていた映画を観ることになった。昔のラブコメ映画だ。特段観たかったわけじゃなかったけれど、どこか懐かしさを感じてたまたま撮っただけの。
内容は、結婚に夢見る平凡なOLが付き合っていた男性にある日急にフラれて、一人やけ酒をしていると隣にとんでもないイケメンが現れて何故か一緒に飲むことに。
その後はお決まりの、起きたらどこ?状態。一晩だけの軽い遊びだと思っていたが、そのイケメンはことあるごとに彼女につきまとってくる。一歩間違えればストーカーだが、顔面威力か?彼女は振り回されながらもその彼に惹かれていく。やがて彼がアメリカに発つことを知った彼女は大声で大告白。彼は最初は彼女も連れて行こうとしたが先を越されたってわけ。で、二人は結ばれハッピーエンド。って言う内容だった気が。
こんなに恋愛がうまくいくものなら、いくらでも恋愛したい。でも私にはこんな恋愛もう一生できないだろう。
なんて考えながら、映画を観ていると
ポテトチップスを食べながらビールを飲んでいた翔琉が映画のキスシーンになりそうなとき、その手をふと止めた。
「?」
トイレかな。それだったら『止めて』って言ってくれればいいのに。と思っていると、翔琉の手が私の頭の後ろに回った。
この時の私は何を考えていたのだろう。
翔琉の顔が無言で近づいてきて、それが合図だと分かっていても避けることはしなかった。
私たちは自然にキスを交わしていた。



