でも、まぁ翔琉は私と同じクラスだけど智花だけ離れちゃって、積もる話でもあるんだろうな。
ここは二人っきりにしてあげるか。
「じゃぁ智花、話聞いてくれてありがと。あたしはここで」と言い出すと
「え゛!何言ってんの!一緒に居ようよ!」と智花が慌てる。
「でも話したい事話せたし」
「話って何?」と翔琉が首を傾け
「それは内緒」と智花が口を挟む。
「何だよー、俺だけ仲間外れかよ。何気に美海とは同じクラスだけど美海は友達と話してることが多いからあんま喋れないし、智花は別クラだろ?」
「そうだけど、話の内容は翔琉には関係のないことだから」と智花がやや冷ややかとも言える口調で言った。
「ま、いいけどさ」
いいんだ。
「こうやって三人で集まるの久しぶりじゃね?何だか懐かしいよな~」
何も知らない翔琉は平和なものだ。
翔琉はそこそこ女子から人気がある。陸上部でもその俊足が認められて早々と先輩や同じ部員たちと打ち解けて水泳部のような独特な(あたしだけ?)ギスギスした感じはなさそうだ。
「翔琉~、あんたの噂話うちのクラスまで回ってきてるよ。速川(翔琉の苗字)くんかっこいい、とか?」
「え?マジ?」
翔琉はどこか嬉しそうに身を乗り出す。中学まではそこまでモテてたイメージはないけれど、高校に入って翔琉はひっそりと人気が出始めてた。
「ねね、翔琉のタイプってどんな子?」と今度は智花が身をちょっと乗り出した。
「タイプ?」と翔琉はちょっと考えて顔を赤くした。
「えーっと……まっすぐで純粋な子……とか?顔はきれい系より可愛い系」
長い間一緒に居たのに初めて聞いたよ、翔琉の好きな子のタイプ。
考えたら、私たち青春真っ只中だな。なのに三人ともカレカノもいないなんて……恋バナをするのも何だかちょっとバカらしい。
「へぇ……そうなんだぁ」とアイスカフェオレが入ったグラスを両手で包みながら智花がほんの少し俯く。
「か、関係ねーだろ、そんなこと」
翔琉は何故か慌てている。
「うん、そう言う子が居たら紹介するよって話」と智花が無理しているように笑っている。
長い付き合いだから分かる。智花……どこか辛そう。
「智花、具合悪い?帰る?」と聞くと
「ううん、大丈夫!」と智花はまたも無理やりといった感じで笑った。
それから話は翔琉の陸上部の話になった。翔琉は順調にタイムを伸ばし、部員の人間関係も良好そうだった。そう言えば翔琉は小学校の頃から走るのがとにかく早かった。性格も人懐っこく、すぐに人と仲良くなれるしクラスではいつもいつの間にかリーラ―シップのようなものを取れる所がある。
体育祭のリレーでは常に一位。アンカーが翔琉に選ばれると一同がほっとしてたのを覚えている。
そのうちに
「翔琉~そろそろこっちにも来いよ~」とさっきの友達が翔琉を大声で呼んだ。
「わり、そろそろ」
翔琉が腰を上げる。
「うん、皆によろしくね~」と智花がにこやかに手を振った。翔琉の友達の集まったテーブルでドっと声が挙がった。
その後翔琉が抜けた私と智花は当たり障りのない日常の話で盛り上がり、夜も20時になろうというときに解散……と言うか家が近くだから殆ど一緒だったけれど帰路についた。
楽しかったけれど、何だか疲れたな……



