帰る途中、水球部員の一人が
「動画とか撮られてない?」と聞いてきた。メガネをかけた少しインテリ風のいかにも頭がよさげな人だった。
私はふるふると顔を横に振った。
『分からない』と言う意味で、だ。
「あいつのことだ。どこかで盗み撮りしてる可能性もある。俺がそれとなくあいつを問い詰めて」と智花の彼氏が言い出してくれが
「や…!大丈夫です!そんなことしたらまた火に油を注ぐことになっちゃう」
「でも万一撮られててネット上に拡散とかされてたりしたら」と智花が心配そうに私を覗き込む。
それは―――正直怖い。
でも沙羅先輩をこれ以上怒らせたらどうなるか……ありとあらゆる仕打ちを考えて、先輩が助けてくれるって言うにも関わらず結局自分にはどうすることもできないことを知らしめられた。
水球部門の部員の人たちと智花と智花の彼氏が送ってくれたおかげで無事家に辿り着くことができた。途中、水球部門の何人かが後を尾けてきてないかも確認してくれた。
家に辿り着いて皆にお礼を言い、私は何も言わず部屋へ猛ダッシュ。頭から布団をかぶって、まだ男達の感触が残っている体を抱えながらブルブルと震えていた。
怖い……
怖かった…
ホントは今すぐにでも海李先輩に全てを打ち明けて、沙羅先輩を何とかしてほしかった。けれどこないだあんなに激しく言い争った後にこの状況だ。事態は悪化するだけに決まっている。
震える手でスマホを取り寄せ、何度海李先輩に電話をしようと思ったか。
でもバイト中だったら迷惑だろうし……こんなことで先輩に心配や迷惑を掛けるわけにはいかない。
その日先輩からは短いメッセージが入ってきただけで、電話は無かった。夜も遅かったしその辺遠慮したんだろう。何回か前、蒼空に怒られたことを気にしているようだったし。
先輩―――声が聞きたい。今すぐ抱きしめて欲しい。
私は先輩がくれたティアドロップ型のネックレスを身に着け布団にくるまり眠ることに決めた。眠ってしまえば、何も考えなくて済む。けれど眠気はやってこなかった。



