人魚のティアドロップ


「あっちです!確かに美海の叫び声が聞こえてきたんです!」

智花の声が聞こえてきた。

智花―――!!

助けて!

と言う思いでいると、幾人かのドタバタと激しい足音が聞こえ、見知った顔の水球部門の部員たちが顔を出した。

「何してんだ!」水球部門の男子が走り寄ってきて、

「何だ!まだ人が居たんかよ!沙羅のヤツ誰も居ないって言ってたじゃんかよ」

三人の男は私から手を離すと、さっさと逃げ出した。

私ははだけた胸元を両手で抱いて必死に隠すと、智花が大判のバスタオルを肩から掛けて巻き付けてくれた。

「先輩……間に合って良かったです…」と水球部員の後ろ…水泳部ではない男子に声を掛けていて

「ああ、まぁ未遂で良かったが」

「誰……」

涙が浮かんだ目でその男子生徒を見上げると

「あたしの彼氏。ちょっと美海のこと話題にしたら、沙羅先輩のこと知ってる風だったからそのまま引き下がらないだろうって。目を光らせておくようにって…アドバイスくれて…」

「大丈夫だったか?」と水球部員の一人がへなへなと腰が抜けた状態の私に視線を合わせるよう膝をついた。私は泣きながらこくこくと頷いた。

「これ、傷害罪だぜ!水泳部の顧問に報告した方がいいんじゃ…」と水球部員が言い出し

「だ、大丈夫です…!」私は彼に縋った。水泳部は学校の先生が一応顧問としているが、外注でコーチを雇っているという状況だ。

「だけど…」水球部員はみんな優しい。

「高井戸に連絡するか?送ってもらうよう俺頼んでみるよ」

え―――?

「何で……海李先輩とのこと……」

まだ涙が乾いてない顔で見上げると

「付き合ってンだろ?高井戸から聞いた。横井さんを見守ってくれって」

”あれ”って競泳部門の人じゃなく水球部門の人のことだったんだ……てっきり先輩のハッタリだと思ってたけど。

「海李……高井戸先輩には心配かけたくありません。一人で…帰れます…」

「そんな危ないことは。俺らが全員で送るよ、なぁ?」と水球部員の人たちが顔を合わせて同じタイミングで頷いている。

「そうしなよ。あたしも一緒だし先輩も」と、智花の彼氏……確かサッカー部員だと聞いていたが雰囲気がどっちかと言うと空手部や剣道部を思わせるような真面目な感じの人だった。

正直、怖かった。また襲われたら、とか考えると。まだ震えは止まらないし、男達に触れられた場所は鳥肌が立ったまま。寒くなんてない筈なのに寒気が私を押しつぶそうとしている感じ。

結局、私はみんなの厚意に甘えて送られることになった。