その後、先輩はやはり律儀に私の家に送り届けてくれた。
「あ、これ美海の分」と言って手渡してくれたのは”K”のイニシャルが入ったマグカップ。
「美海からもらったカップは何が何でも死守するから」
私はこくりと頷いた。
「何か……今日は色々幻滅させてごめんな」
「げ、幻滅とかしてない!でも…できればもっと早く話して欲しかった」
私に何ができるのか、と問われれば今は何も思いつかないけれど。
「こんな俺だけどさ、俺とまだ一緒に居てくれる?」
両手を掴まれて、先輩は切なそうに眉を寄せた。
「あ…たりまえじゃないですか!こんなことで離れたりしません!
先輩、卒業したらどこか違う地方へ行きませんか?私も後を追いかけます。そこで二人っきりで……」
「違う場所で二人きりか。夢のようだな」
「できます。わ、私料理は苦手ですがこれから頑張ります。先輩のために」
「気にするとこ、そこかよ」先輩は軽く笑った。
「先輩、この先どんなことがあろうと、私は先輩のこと好きで居続けます。だからずっと傍に―――」
居て。
と言う言葉は優しい口づけでかき消された。
短い口づけが終わり唇と唇が離れると
「わり、ここ美海んちの前だった。家の人に知られたらマズイよな」と苦笑いを浮かべ「平凡とは言え毎日明るい美海んちが羨ましかった。家族仲が良いのかどうか分からないけれどいかにも普通そうで」
そっか……それすらも先輩の目にはきれいに映ったのかもしれない。
「来月の美海の誕生日、空けておいて。何かうまいもん食いに行こうぜ」
先輩は無邪気に笑いながら私の頭を撫でてきた。
「去年は間に合わなかったけど、クリスマスだろ~、また初詣も行きたいな」
次の約束―――があるって、先輩はまだまだ私と一緒にいてくれるんだ。
「はい!でも普通の所でいいですよ。ファミレスとかでもあたしは先輩と居るだけで楽しいから」
「おい、俺を甲斐性無しみたいな言い方すんな」
軽くデコピンされて、おでこを撫でさすってると
「嘘、気ぃ遣ってくれてサンキュ。でも俺、好きな女には色々したいタイプだから」
好きな―――女……
なんて良い響き。
こうして先輩は帰って行った。



