私はまだ知らない。先輩の中に黒く渦巻く”何か”を。それは時折ふとした瞬間に顔を出し、私を不安にさせる。
それでも今日は先輩の誕生日だ。ここで私が暗くなってたら先輩に失礼だよね。
この問題は追々考えて行こう、と考えを切り替えそれから夕方近くまで私たちは存分にプールを楽しんだ。
軽くシャワーを浴び、着替えを済ませて出入口で再び待ち合わせると
「あー、今日は楽しかったな、人生さいこーな誕生日だった」と先輩は両手を頭の後ろで組んで名残惜しそうに遠ざかっていくプールのレジャーランドを眺める。
そだ、私まだ先輩に誕生日プレゼント渡してない。
「これからどうする?軽く飯でも食って…」と先輩が言いかけたとき、私は先輩のTシャツの裾を何故かきゅっと引っ張っていた。
「ん?」先輩が首を傾げる。
「あ……あの……いつもの感じじゃなくて、今日は特別な日だから……先輩と二人っきり……誰も邪魔されないところ
行きたい」
自分でも衝動的な発言だったと思う。勿論、いつそう言う雰囲気になってもいいように先輩と会うときは下着には気合入れてたけど。
こ、こんな女の私から誘うなんてはしたないことかな……
「それって―――」
先輩が目をせわしなくまばたきさせる。
「あ、嫌ならいいです!ちょっと言ってみただけで!」慌てて手を振ると
先輩は無言で手を握ってきた。
「行こうか」
それって……どっち?



