人魚のティアドロップ


一通り遊び終えてお昼になると私たちは持ってきたお弁当を広げることにした。たくさんあるプールの周りは座って食事や飲んだりできるスペースが広く作ってある。

「あ、あんまり期待しないでくださいね」と前置いて持ってきた弁当箱を開けると

「うわっ!うまっそ!」と先輩は目を輝かせた。「俺、手作り弁当って初めて」

え?初めて??

「美海はいい奥さんになりそうだな」と言われたけど、半分お母さんに手伝ってもらいました……とは言えず。

でも『いい奥さん』になりたいです、先輩の。

それでもちょっと焦げた卵焼きを手づかみで口に放り込むと先輩は

「ん!んまい!」と笑った。

良かった……

お弁当も食べ終え、

「全部うまかった~!」と先輩はお腹の辺りを撫でさすりながら「あ」と声を出した。

「え?」

先輩の視線の先を追っていくと、小さな子供…たぶん五歳ぐらいの男の子が割と水深の深そうな大人用プールのプールサイドに走っていった。どうやら転がったビーチボールを追いかけているようだった。

「あぶね」と言うが早いか先輩は立ち上がり走り出した。

ビーチボールを追いかけていた子供を追い抜かしたけれど、ビーチボールはすでに弧を描いてプールに落ちそうになっていた。

子供はまだビーチボールを追いかけている。

危ない!

と思った瞬間先輩はプールの中に飛び込みビーチボールを手でキャッチ。

子供は足を止めた。

先輩は水から這い出ると、子供にビーチボールを手渡し

「あぶねーぞ、一人か?」と子供に聞いた。子供はおずおずと手を差し出しビーチボールを手にして頭を横に振る。

「お母さんがタコ焼き買ってきてるからじっとしててって」

「だったらじっとしてなきゃ」

プールから上がった先輩は男の子の頭を撫で、男の子はどこかつまらなさそう……と言うか退屈そう?に俯いた。

「よし、母ちゃんが来るまで兄ちゃんとサッカーでもするか?」と子供の目線に合わせて先輩がしゃがみこむと

「うん!」と子供は大きく頷いた。