お母さんにはあらかじめ智花とご飯食べてから帰るってメッセージを送っておいたから、家に帰っても怒られることはなかった。
お風呂に入り、髪を乾かして軽くスキンケアをして部屋に入ると海李先輩から着信があった。
夜も11時を少し回ってる。常識的な時間ではないことが分かっていたけれど、慌てて折り返しの電話をした。
『美海~?起きてた?もしかして起こしちまった?』
「いえ!お風呂に入ってて」
『遅い時間帯だな。また沙羅に嫌がらせされてたんか?』と先輩の声が低くなった。
「い、いえ…違います!ちょっと事情があって今日は帰るのが遅くなっちゃって」
『事情?』先輩の声がちょっと低くなった。こうゆうときって電話だけだともどかしい。会って顔を見て話したいよ。先輩が何を考えてるのか何を感じているのか、表情を見たら分かる気がするのに。
「実は友達が失恋しちゃって……今までちょっと話聞いてたので」
『友達?失恋?』
「そうです…前にも話した智花のことですけど…」
こんなこと海李先輩に軽々しく話していいのか分からなかったけれど、でも先輩は口が堅いし面白おかしく話を聞くタイプではない。
案の定
『そっか…それは大変だったな…失恋てさ、結構クるよな……俺も元カノのとき結構引きずったし…』
やっぱ居たんだ……元カノ…まぁそうだよね。何となく想像はできたけど。
でもその存在を海李先輩の口から直接聞くと胸に錘が入ったようにズシンとくるな。
『でも時が癒してくれるしさ、あの子だったら選り取り見取りだろ?いいヤツ見つかるって』
そう―――なのかな……そう言う簡単な問題なのかな。そうだったらいいんだけど。
『俺の経験談だから。って、余計当てにならないか……大体男と女じゃ恋愛の価値観も違うしな』
やっぱり…先輩は真剣に考えてくれる。
こんなところも好き。
「先輩―――好き、です」
唐突に言ってしまった。何故だろう。智花が失恋したばかりで、それがいつか自分の身にも降りかかるかも、と不安だったかもしれない。こんな、気持ちを確かめるようなこと卑怯なことだよね。
「ごめ…なさ!あたしったら急に…」
『俺も、俺も
美海のことすっげぇ好き。
美海に出会えて良かった。あんまこうゆうの信じないけどさ俺は美海と出逢えこと、奇跡だと思ってる』
奇跡―――
目頭が急に熱くなって何故だか涙が出てきて、私は慌てて目元を手で押さえた。



