それから二か月経った。
私たちの”お付き合い”に特に進展はなかった。私は水泳部に、海李先輩はバイトで会えない日のことが多かったけれど、たまに水泳部のが終わった後や、水泳部が休みの日曜日に先輩はバイトを休みにしてくれて週に二回ぐらいは何とか先輩が時間を作ってくれた。
遊びに行く、と言ってもお互い学生の私たちが行くところはたかが知れてる。ショッピングモールでウィンドウショッピングやらカラオケやら。
いつだったか、ショッピングモールのちょっとお高めのジュエリーショップを興味本位で覗いてみたら、可愛いネックレスを発見した。
まるで水を思わせる透き通るような淡いブルーのアクアマリンの石がちょこんと配置されたティアドロップ型のネックレス。
「わー、可愛い……」と思ったけれどお値段を見て、すぐに(お値段が)『可愛くない』とがくり。流石に今のお小遣いじゃなー、他に欲しいものも色々あるし、私にはちょっと大人っぽ過ぎかと言う色々理由をつけて諦めることに。
先輩が
「欲しくないの?」と聞いてきたけれど、
『欲しい』って言ったら、また先輩私の為に無理しそうで言えなかった。
そりゃ大好きな人からあんなに可愛いネックレス貰ったら嬉しいよ。
だけど、それよりも先輩と過ごす時間の方が大事。
水泳部の方は相変わらずの成績で伸びず劣らずだったけれど、この頃ちょっとだけ沙羅先輩の嫌がらせが減ったことはありがたかった。
そんなわけでそれからまた一か月経つと凍えるような寒さが少し和らいで、あちこちの地方で春一番が吹き荒れ、春休みに入る直前のある時期のことだった。
この時、まだ私たち競泳部門は外のプールを使わせてもらえない時期だったからアーティスティック部門と一緒に温室プールだったけれど、部活が終わってお互い競泳水着同士の智花が声を掛けてきた。
「美海……」
智花は毎日会ってるけど、今日は顔色がすぐれなかった。大きな目が腫れていてぷっくりとした唇に色味がない。
「どーしたの!風邪でもひいた?」今朝はいつも約束している時間帯にも現れず”ごめん、先行ってて。寝坊した”と言うメッセージだけをもらったからそれに従ったけれど、この時理由を聞いておけばよかったんだ。



