入学初日は当然入学式が行われ、その後は簡単なオリエンテーリング。
軽く部活の説明もあり運動部に力を入れているのか、文化部に比べて多い気がした。
その中で翔琉が希望していた陸上部もあった。翔琉は当然そこに入部するだろう。智花も水泳部だろう。
私も当然水泳部に決めていた。
一週間ほど経って部活動の説明がとうとう始まった。希望の部活入部希望の紙を渡されたときわくわくが止まらなかった。
私は問題は特になく難なく水泳部に入ることにできたが
入部初日
かいり先輩の姿は見当たらなかった。
たまたま体調不良で休みだったのかな、と軽く考えていたが、一週間経っても一か月経ってもかいり先輩は姿を現さなかった。あのきれいなマネージャーは相変わらずマネージャーとして存在していたけれど。
思い切って他の男子の先輩にかいり先輩のことを聞いてみた。
「海李?あー、あいつ退部したよ」
え―――――?
退部?
何で―――
「何か、他校の不良と喧嘩したとかで強制退部?」
「いや、俺が聞いたのはその喧嘩で怪我して水泳できなくなったとか」
「俺、ヤバいバイトしてるって聞いた」
噂は全て良くないものだった。
”あの”かいり先輩が―――
にわかに信じられなかった。
思い切ってあのきれいなマネージャーに聞いてみようかと思ったけれど、辞めた。最初のイメージ通りつんつんしていて何だか声を掛けづらい。特に私は実力もないし、相手にされないのがオチだろう。
真実が知りたくて、私は普段踏み込まない二年生の教室が連なる廊下を歩いた。一人で二年生の校舎に入るのは初めてでビクビクした。こんなんなら智花か翔琉も一緒に来てもらえれば良かったかなぁ。でもかいり先輩を探してるって知られたら反対されるだろうし。特に翔琉は事情を知らないだけに説明をするのも面倒だった。
二年生の校舎は1組~7組まであったけれど、かいり先輩がどの組にいるのかも分からない。
廊下をきょろきょろ歩きながらそぉっと一組ずつ教室の中を覗いてみる。けれどかいり先輩の姿はどこにもなかった。
もしかして特待取り消しになって退学までしちゃった?
殆ど諦めモードが入っていた私は俯きながらトボトボと二年生の校舎を後にしようとしていたら、誰かと激しくぶつかってその節に後ろに倒れそうになって尻もちをつきそうになった。
「あっぶね」と倒れる前に手を掴んでくれたその手の感触に覚えがあった。
それはあのときの体温と大きな手、さらりとした骨ばった指。
「かいり―――先輩?」



