先輩はお目当てのおしるこを一杯だけ買って最初に私に手渡してくれた。
「え?先輩は食べないんですか?」
「先に美海食いなよ」
「え、でも先輩あんなに食べたそうだったのに」
「いいから、体冷えてんぞ」と私の手をそっと握ってその手の中に温かいおしるこのカップを持たせる。
マイペースだけどさりげない気遣いがあるっていうのかな…嬉しいけど、何だか申し訳ない気持ちになる。
熱々のおしるこの紙カップに口を付けると思った以上の熱が唇に伝わってきた。ゆっくりと甘さを感じる余裕がない。
「うまい?」と聞かれ曖昧に頷くと
「んじゃ、俺にも頂戴」と言って私の手から先輩の手に渡ったおしるこの紙カップに口を付ける先輩。
「あちっ!」と言いながらも「うまっ!」とすぐに顔を綻ばせる。
「前から思ってましたけど、先輩って甘いもの好きですよね」
「あ?似合わないってか?」
先輩……今、ヤンキー出てましたよ。とは言えず
「いえ、意外と可愛いとこあるなぁって」
「意外とは何だ、意外とは」先輩はまたも私の頭をぐしゃぐしゃ。でも顔には満面の笑みが浮かんでいた。良かった、怒らせたわけじゃなかったみたい。
その後は先輩が買った、たい焼き、鈴かすてら、私のリクエストでイカ焼きを食べ回った。
串にささった丸ごとのイカ焼きを食べていると
「ちょっとちょーだい」とまたもいきなり距離を詰めてイカ焼きをガブリとかじる先輩。
「もう、最初から『ちょうだい』って言ってくれたら渡すのに」と苦笑いを漏らすと、
「美海がうまそうに食うから」と言って、私のせい??
ま、いいけど。
そんなわけでお参り目的、と言うより食べて私たちの初詣は終わった。
「このままバイバイじゃあじけないからどこか行かない?」との先輩の提案に私はぶんぶん顔を縦に振った。
御本堂の裏は当然人が少なく、境内の中は静かだった。樹齢を重ねた大きな木が一本立ってて先輩はそこに手をついて今はすっかり葉をなくした枝がまるで蜘蛛の巣のように張り巡らされているのを眺めている。
「海李先輩?」と声を掛けると
先輩はまたも無邪気な笑顔を浮かべ
「見てみ、すげーでかい木」と言いどこか子供のような表情を浮かべて上を眺めていた。
「そうですね、何年ぐらいなんだろう」と私が近づくと、先輩の大きな手が私の頭を捉えそのままちょっと強引な仕草で引き寄せられた。
びっくりして目を開いていると、突然の
キス。
合わさった唇はすぐに離れて行ったけど
「ちょっ……!先輩、ここ神社」と慌てて周りをキョロキョロ。
でも一瞬のことだったし、誰も見てなかったみたいでほっ。
「はは、いつか聞いた台詞」と先輩は笑ってたけど、私は笑えない。
そりゃキスは嬉しいけど
「ここ神社。不謹慎じゃないですか」とちょっと目を上げると
「何で?神前結婚式とかあるじゃん」と先輩はケロリ。
け、結婚―――!?



