人魚のティアドロップ


神社は駅から歩いて10分程だった。細い道が続き、スマホのマップアプリを頼りに

「あれ…?こっちで合ってる筈なんだけど」

それらしい賑やかな声も聞こえないし、心配になってきたら

「どれどれ」と先輩が私のスマホを覗き込んできた。

ふいに近づいた私たちの距離。

ドキリと心臓が鳴って思わず胸のあたりを押さえる。

「あー、一本間違えたみたいだな。次で曲がろうぜ」と先輩はマイペース。

先輩は……時折予想もつかないタイミングで距離を詰めてくる。嬉しいことだけど、先輩はドキドキしたりとか、しないのかな。

私は先輩が初めて私が好きになった人で、はじめての彼氏で、はじめての―――

色んな経験が先輩ではじめてで、でも先輩のはじめてはきっと違う人。そう思うとドキドキがチクりと変わった。

先輩のおかげで神社には無事につくことができた。

それ程大きくないけれど、人はやはり多く出店なんかも出てた。

「あ、おしるこある!食いたい!」と先輩はお参りより出店に夢中のようで

「先輩、お参りが先ですよ」と引っ張っていくと

「分かったよ。じゃぁ後で」とまるで子供の様に口を尖らせている。

ふふっ可愛い。

お参りをする為、本堂に並ぶもこれが参拝客が思いのほか多くて結構時間がかかった。

「う゛~さみぃ。早くおしるこ飲みてー」とよっぽどおしるこが飲みたかったのか先輩は首をすぼめてそれでも大人しく私の隣に並んでいる。

ようやく私たちの番になり二拝、お賽銭を入れて二拍手最後に一礼していると、ちらちらと先輩が私の様子を窺っていた。

「どうしたんですか?」

「いや…初詣で参拝したことなかったからやり方分かんなくて」

ああ、それで…私の様子を見て真似しようってわけか。てか初詣したことない人っているんだ。初めてそう言う人と会ったよ。

先輩はきっちり両手を合わせると長い睫毛を伏せて静かに願い事をしている。

何をお願いしてるんだろう。

私は勿論、これからの海李先輩と一緒にいられますように、って、お願いしたけどね。

生真面目に願い事をする先輩の横顔……やっぱかっこいい。

て見とれてる場合じゃないよね。

先輩がゆっくりと目を開けて一礼すると、待ってましたとばかり私たちの後ろに並んだこちらも高校生のカップルらしき二人と交代した。

「先輩、何をお願いしたんですか?」さりげなく聞いてみると

「秘密」と言ってちょっと意地悪そうに笑った。

確かに願い事を人に言ってしまうと、叶わないって言うしね。私はそれ以上聞かず恒例のおみくじを引き、先輩は『吉』、私は『小吉』だった。願い事、叶う。と書かれていてすでに近くの木々におみくじをくくりつけていた先輩のおみくじの内容は分からないままだったけれど。

「何か悪いことでも書いてありましたか?」

「いや?でもおみくじってこうするのが決まりだろ?」

参拝の仕方は知らないくせにそう言うことは知ってるんだ。

まぁ木に括り付けることは決まりでもないけど。

私は良いことが書いてあったからお財布の中に仕舞いこみ、

「な、おしるこ食いに行こうぜ~」とよっぽど食べたかったのか先輩の足取りは軽く出店一直線だ。

いいんだけどね。こうゆうマイペースなところも。好きなんだけどね。