御晦日、毎年私たち家族はリビングに集まって紅白歌合戦を聞きながらお母さんが作ってくれた年越しそばを食べて除夜の鐘を聞く、と言うのが定番だった。自分の部屋にもテレビがあるけれどうちは何故か家族がリビングに揃うのが何となくの決まりだ。
紅白歌合戦は新しいアイドルやら古い演歌歌手など色んな歌手が出ていて、お父さんは
「最近のアイドルはみんな同じ顔に見えるなー」とおっさん発言。
「親父知らねーの?今この子たちすっげぇ流行ってるんだぜ」と何故か蒼空が得意げになってピンクや黄色、赤やブルーのひらひら衣装を着た女の子たちが踊ったり歌ったりしているときに調子っぱずれの歌で口ずさんでいる。
私は、と言うとそのテレビを見るのもそぞろで明日が早くこないかな~とそれだけを考えていた。
早く海李先輩に会いたいよ。
紅白も終盤に入り毎年恒例の演歌歌手が迫力ある歌を披露しだしたとき、今年も平和な年末だなー、と思ってたが、そのときだった。
私のスマホに着信があった。
こんな時間に誰?とスマホを裏返すと相手は海李先輩で
え!何で!
私はスマホを抱えて「ごめん、ちょっと電話」と言って慌てて二階に上がった。
「何?男~?」と蒼空がからかってきたが
「違っ!そんなんじゃないから」と言い訳して慌てて階段を駆け上がる。部屋に入ると私は恐る恐る電話に出た。
「も……もしもし…」
もしかして初詣行けなくなったとか?
色々不安だったけれど
『美海~、今美海の家の前』
「え!じゃぁ出ていきます。ちょっと待ってて」と慌ててコートを手に取ろうとすると
『いや、そこでいい。今出てったら家の人に怒られるだろ?』
それは…そうかもしれないけど。怒られる…まではいかないだろうけど色々勘繰られそう。特に蒼空に。蒼空から伝わってお母さんに知られたら怒られること間違いなし、だしな。
『もうすぐでカウントダウンじゃん?一緒にしたいなーって思って』
先輩の発言は意外なものだった。
え!そりゃ海李先輩とカウントダウンできたら最高だけど。
「でも、それじゃ先輩が風邪ひいちゃう…」
『はは、美海は優しいな~、鍛えてるから大丈夫』と謎の『大丈夫』発言を聞いて先輩がそう言うなら大丈夫か…と何故か納得して私は自身の部屋のテレビを付けるとカウントダウンを待ち望んでいるテレビ番組のチャンネルをあちこち回した。
一つだけアイドルやら芸人さんだとかごちゃまぜになった何か分からない番組が、どこかのテーマパークで今か今かとカウントダウンを待ち望んでいる番組があり、そのまま点けっぱなしにした。カウントダウンまではじ10分程あったが、その間私たちは会えなかった分の話をした。
先輩はバイトでの話を、私は家での過ごし方を。先輩は私のくだらない家族たちの話を楽しそうに聞いてくれた。何気ない毎日、代わり映えのない日々、それでもまるでその日々に憧れを抱いているように熱心に。
SNSを見て良さげな神社を見つけたことを報告すると
『おー、サンキュな。美海にばっか任せて悪かった』と先輩が小さく頭を下げるのが分かる。あまり街灯の少ない道だからはっきりと顔は見えないけど、きっと笑ってくれてるんだろうな。



