人魚のティアドロップ


次の日、志望校希望欄に高校の名前を記入していると

「よ」と軽く声を掛けられ、こちらも智花と一緒で幼稚園からの幼馴染の翔琉(かける)に声を掛けられた。

「よ」こちらも気軽に声を掛けなおし、翔琉は私の志望希望の用紙を覗き込んできた。

「開成?」翔琉は目をぱちぱちさせて「何で?お前の学力だったらもっと上狙えんじゃん」と不思議そうにしていた。

「家が近いし、それに……水泳部が良かったから」と最後の方は何故か尻すぼみになった。別に……悪いこと言ってるわけじゃないのに。

動機が不純と言われそうだったけれど

「そっか、開成かぁ…そこなら俺も行けるかな」と翔琉は私の動機をあまり深く考えず、難しいものでも考えるように腕を組む。

「まさか翔琉、高校もあたしと一緒に、とか考えてる?」目を上げると

「え…!まぁ…だって俺らちっちぇぇ頃から一緒だったし、今更バラバラとか」

翔琉は早口で言って手を振る。

バラバラって言っても家近くだし、会おうと思えばいつでも会えるのに。

ま、いいけどね。翔琉がどこに行こうが。

智花も何だかんだいいつつ、やはりアーティスティックが魅力的だったのか開成にするって言うし。

先生には特に反対されなかった。

ただ、私は水泳の実力はそこそこだから特待で入るわけには行かず、勉強を頑張る他なかったけど。

そう言うわけで私は残りの中学の時間を勉強に費やし、見事第一志望の開成に合格することができた。

智花も翔琉も何とか合格できて、あまり変わり映えのないメンバーで今度は高校に通うことになる。

新しい制服は紺色のブレザーに水色と白のチェックプリーツスカート。水色のシャツにネイビーと黄色のストライプリボン。見学に行ったときは制服まで目に行かなかったけど、意外に可愛い。

着慣れない制服にドキドキするのは単に制服のせいなのか、それともかいり先輩にもうすぐ会えるから、だろうか。

かいり先輩、私のこと覚えてくれてるかな。