人魚のティアドロップ


翔琉はコンビニか何かの帰りなのだろうか、持っていたビニール袋をドサリと地面に落として、私たちを凝視していた。ビニール袋の中からコーラのペットボトルとかプリンとかが飛び出た。

「何って……」と言ってはじめて自分が何をしているのか気づいた。私は海李先輩の背中から抱き着いているわけで。

慌てて海李先輩から離れる。

翔琉は落ちたビニール袋なんて目に入っていないようで、つかつかとこっちに向かってきて突如私の手首を掴んだ。

「何してんだよ」もう一度聞かれて

「えっと……」

答えに悩んだ。

「忘れ物、届けてくれただけ」と先輩はいつの間にか出した家の鍵だろうと思われる鍵が月の光に反射して銀色に光る鍵をかざしている。忘れ物、届けたわけじゃないけど気を利かせてくれたんだろうな。

「嘘つけ。美海、こいつに抱き着いてただろ。まさかこいつのこと好……」

「違っ!先輩の言った通り忘れ物届けにきただけ。抱き着いたのはふざけただけ」と私は必死に言い訳。何で言い訳したんだろう。素直に好きって言ってしまえばよかったけれど、その言葉だけは先輩だけにしか知られたくない。

「それに”こいつ”じゃなくてこのひとは先輩。”海李先輩”って名前があるんだから」と翔琉を睨むと

「どっちでもいいよ、そんなこと」

翔琉は目を怒らせたまま海李先輩を睨んでいる。海李先輩は少し困惑したようにまばたきをしていた。

「いい加減にしてよ。翔琉何が気に入らないの!」私は翔琉の手を乱暴に払うと、今度は翔琉の方が少し悲しそうに眉を下げた。

「何もかもだよ!そんな……化粧までしてお前には似合わねぇよ」とぐいと翔琉は乱暴に私の唇に乗ったグロスをふき取る。

「ちょっ!」今度は私が声をあげようとすると海李先輩が翔琉の腕を掴んだ。

「美海に何するんだよ。せっかく可愛くメイクしてたのに」

え?指摘してくれなかったから気付いてないと思ってたけど……気づいてくれてたんだ。

「女が可愛く変身したいと思うって自然なことだろ。そんなことも気づかないなんてまだまだガキだな」

海李先輩は翔琉の手を乱暴に払うと、突如私の肩を抱き

「俺は嬉しいけど?可愛くなっていく美海を見るの」

う、嬉しい?可愛い!?


「先輩、美海のこと好きなんですか」


と翔琉がとんでもないことを言い出し、海李先輩は言葉を詰まらせた。