流石に12月の年末。コートは着てるけど手袋をしていなくて指先が冷える。両手を合わせて息を吹きかけてると
「寒い?」と海李先輩が聞いてきて
「え、はい…」と素直に答えると同時、またも先輩の手が私の手を取り、ほぼ強引な仕草で先輩のポケットに手を突っ込まれる。
「これで少しは温かくなるんじゃね?」
え……わぁ…これは全く想像してなかった。急なことでびっくりしてると
「わり、嫌だったら離して?」と言われ私はゆるゆると首を横に振った。
先輩のポケットの中は今まで先輩の手が入っていたからか、温かった。
先輩のぬくもり。今日は手を洗いたくないな~って私は好きな芸能人と握手を交わした女子かっての。
最初は街中をゆっくり歩いていたけれど、そのうち街灯も乏しい薄暗い道へと変わっていった。いつだったか、私たちが初めて体を重ねた夜空のように星々がきれに輝いている、きれいな形の三日月も浮かんでいた。
「はー、楽しかったなぁ。今日は帰りたくない」と先輩がきれいな空を見上げて言い出し、私も同じ気持ちになった。
先輩の発言はもしかして、今日二回目の―――と想像をしてしまったけれど海李先輩はキスもせず私を律儀にお家に送ってくれた。
キス―――したかった。
って、私はさかりがついた猫か。
家の明かりが見えてくると
「じゃな、今日はすっげぇ楽しかった」と先輩は軽く手を上げて踵を返そうとする。
楽しかったけれど、何だか凄く―――寂しい。
海李先輩はそんな私の気持ちにも当然気づかずとうとう私に背を向け歩いて行ってしまう。
少しずつ遠ざかる背中。
嫌だよ、このままさよなら、なんて。
私は走り出した。
そのまままるでタックルをする勢いで先輩の背中に抱き着く。
「ぅお!」と先輩が驚いた声をあげる。「どした?」
「きょ……今日はありがとうございました」
わー!私のバカ!何で抱き着いたのに言葉を考えてなかったのよ。
「おう、こっちもサンキュな」と海李先輩は顔だけ振り向いて笑った。
「先輩―――好……」
”き”と言いかけた時
「美海?」
聞き覚えのある声が聞こえて二人してその声がする方へ振り返った。
「翔琉―――?」



