人魚のティアドロップ


店内はオレンジ色の優しい色合いの照明で満たされていて、所々キャンドルの光が灯っている。観葉植物がオシャレな瓶にきれいにかざられていてまるで漫画に出てきそうな店内だった。

ここで二人きりの食事。まだ席にもついてないのにまるで夢の中にいるようで足元がふわふわしている。

「予約した高井戸です」と海李先輩が店員さんに言って

「お待ちしていました」とにこにこ笑顔で恭しく頭を下げ、席へと案内してくれる。

先輩が選んでくれたお店、誘ってくれたお店。でも何だか高そう。奢ってもらおうなんて思ってないけど、ちょっと敷居が高そうで緊張。

席へ着くとすぐにメニュー表を渡された。案の定、一番安いミートソーススパゲティでも2,000円はする。

「言ったろ?今日は俺の驕りだって。好きなの頼めよ」と先輩に言われ

「あ……じゃぁミートソーススパゲッティで」と言うと海李先輩は目を細めて顔を近づけてくる。

え……え…?

「美海、遠慮してるだろ」

「え……?そんなことは……」

「奢るって言ったんだから好きなの食え」

ホントは……このホタテと海老のクリームソースが気になってたけど、2,800円もするし。

意識なく何となくその辺で視線を彷徨わせていると、

「ん?」と先輩が予告もなく身を乗り出し、私の手にしたメニュー表を覗き込んできた。

わぁ!

いきなりはふいうちだよ。

「これ?」と私が気になっていたのを当てられ、何て答えていいのか言い訳もできずあたふたとしていると

「じゃぁ俺はカラスミと海老のペペロンチーノ、それからサラダはー…あ、飲みもんは?」と聞かれ

「み、水でいいです」これ以上先輩に負担を掛けるのは良くない。

「そー言うなよ。約束だし。好きな飲み物は?」とまたもさらりと答え

「お。オレンジジュース」と何とか答えると

「オッケー」と言い先輩は自分が選んだパスタと私の分とサラダとオレンジジュース、先輩のジンジャーエールを店員さんに頼んだ。

こ、これだけでも結構いきそうだよ。幾ら奢るって言われても何か悪い気がする。緊張と余計な考えを浮かべていたから喉がカラカラ。運ばれてきた水を飲むとその水すらおいしく感じた。よく見るとお水の入っているピッチャーもグラスも結構濃い青色をしている。

物珍し気にそれを眺めていると

「青色の入れ物に水を入れると甘味が増すんだって」と先輩が得意げになってちょっと背を逸らす。

「へー、物知りですね」勉強は全然なのに。

「こないだテレビで見た」

あそ。先輩って色々謎。