人魚のティアドロップ


私は慌てて智花にヘルプコール。かくかくしかじか急いで海李先輩と出かけることを話し聞かせると、智花はすぐに駆けつけてくれた。

私の部屋に入るなり智花は

「わぁ……泥棒にでも入られた?」と目をぱちぱち。と言うのも、ありとあらゆる服がベッドに山盛り。バッグや小物は床に散らばっている状態。

一応女子だからそれなりに興味はあったけれど。今まで水泳一筋、私の持ってるオシャレな服なんてたかが知れてる。

智花は服たちを眺めて

「うーん、どこへ行くの?」と聞いてきた。

「分かんない。聞く間もなく時間指定だけされて。食事しようって」

「そこ、聞こうよ」

「だよね……」私のバカ。ああ、ホントにどうしよう。

「とりあえずどこに行っても対応できる、これとこれなんてどう?可愛いし」と智花がベッドに散乱した服を取り出した。

それは白いシンプルなニットと、白、レモンイエロー、黒の大柄なチェック柄の少しタイトなスカート。少し長めの丈で妙な色気がない。確かにこの組み合わせだったら張り切り過ぎじゃないし、どこでも対応できそう。

「コートは、これかな?」

と、智花が手に取ったのは大きな襟が可愛くて買った少し短め丈の黒いツイードコート。

流石智花!これなら可愛すぎずいやらしすぎず、かといって無難過ぎず。

「バッグはこれかな」とブラウンの小さめ斜め掛けバッグを手にして、あっという間にコーデが決まった。

「ついでに少しメイクして行こ」と智花は持参してきたトートバッグから化粧ポーチを取り出した。智花……何か楽しんでない?行くの私だよ?

「え!でもそれじゃ張り切り過ぎじゃ?」

「何言ってンの、久しぶりに会うんだよ。美海がどれだけ可愛いか見せつけてやらないと。沙羅先輩に負けないぐらいに」

いや、どう逆立ちしたって沙羅先輩には勝てないよ。と言う言葉は仕舞いこんだ。

けれど智花のおかげで助かった!

すると部屋のノックもなしに蒼空が飛び込んできた。

「姉ちゃん!智花姉ちゃん来てるってホント?」

「わー、蒼空くん久しぶり」と智花がにっこり笑うと蒼空はあからさまに顔を赤くさせた。そう、蒼空は昔から智花のことが好きなのだ。

「智花姉ちゃん、夕飯食ってく?母さんが用意してるって」

「わー、ホント?嬉しいけどあたし今日はすぐ帰るの~ごめんね。美海に呼ばれただけだから」

「呼ばれた?姉ちゃん智花姉ちゃんをパシリにしてるのかよ」蒼空が目を吊り上げる。

「パシリ?違うよ。ちょっと困ったことがあったから呼んだだけ」

蒼空の発言にイラっときながらムっとして言うと蒼空はここにきてはじめて私を見ると

「姉ちゃんオシャレして、どっかいくのか?」

ギクリ。

「あ、そうそう。久しぶりに部活休みになったからあたしたち普段行かないカフェに行こうって急に決めて」と智花が慌てる。

ナイス智花!

「そっか。女子会ってヤツか。姉ちゃんでもそうゆうのやるのな」

蒼空、一々一言余分だけど単純なヤツで良かった。