それから二日後、私の方も試験の答案用紙が返ってきて、こちらはいつも通り安定の成績。殆どが90点以上で満足。海李先輩と勉強した甲斐があったからかな。試験が終わって一週間経つと今度は冬休み。
でも冬休み中でも終業式と年末年始を除いて部活動はある。
まだ冬休みには三日程あったけれどその間、やはり海李先輩から連絡はなかった。
『奢る』って言ってたのに……やっぱ軽い口約束だったのかなぁ…
こっちから”今何してます?”と何度も送ろうとしてやはり辞めた。都合の良い女にはなりたくなかった。軽いと思われたくなかった。
水泳部も相変わらず淡々とした練習が続いていたが、私の成績は少し伸びた。海李先輩のおかげかな。
「凄いぞ、短期間でここまでタイムが伸びるとは」とコーチがストップウォッチを確認しながら目をぱちぱち。「最近自主練頑張ってたからな。やる気があっていいぞ」と水泳帽の上から頭をぽんぽんと叩かれた。
コーチは、海李先輩よりも10センチ程背が高くて180以上ある高身長のうえ、なかなかの甘いマスクのハンサムな顔立ち。勿論水泳のコーチだから体はひきしまってるし。水泳部でも男女問わずフランクだから自然モテる。当然狙っている子も多いわけで何人かが告白したとかどうかと言う噂は聞いたことがあるが、コーチに浮いた噂はなかった。だけどまさか沙羅先輩と付き合ってたなんて。
その瞬間を沙羅先輩に見られていたのか
「ちょっとタイムが伸びたからっていい気になってるんじゃないわよ。上には上がいるんだから、そのままじゃ大会なんてまだまだ無理ね」とふんと鼻息を吐いて嫌味を言われた。
沙羅先輩って分かりやすい。好きなコーチが私を褒めたのが気に食わないのだ。
私は悪いことしてないのに「はい、すみません。もっとがんばります」と頭を下げた。
沙羅先輩はそれ以上何も言い返す言葉がなかったのか、またもふんと鼻息をはいてつんと顔を背け行ってしまった。
「何あれ、高飛車ー」と水泳部でもできた友達がこそっと私に耳打ち。別の友達は「沙羅先輩って美海にだけ当たり強くない?」と心配そうな声。「美海、何かやった?覚えない?」
覚え……って言うか、それは私が海李先輩と仲良くしてるのが気に食わないだけで、でもそれって理不尽だよね。自分は好きな人が居るのに海李先輩を取られたと思ってるところか。
私だったら翔琉が女子の誰と仲良くしようが関係ないし、何とも思わないのに。
全ての男は自分のものだと思い込んでいるのだろうか。確かにあれだけ可愛かったらそう思う自信があるのは仕方のないことだと思うけど、それでも性格は良いと思えないよね。
それからも部活中の沙羅先輩の小さな嫌がらせは続いた。
水球部門が使っていたボールがプールサイドに転がっていて。沙羅先輩は私の方に向かって軽く蹴ってきた。違う方を見ながら歩いていた私は当然そのボールに躓き派手に転んだ。
「ごめーん、ボールが足に当たっちゃった」と先輩は口元に意地悪な笑みを浮かべいる。私はお尻をしたたか打ち、起き上がるのが大変。
それでも気丈に「いえ、大丈夫です」と言って水球部の部員にボールを投げて返すと沙羅先輩は小さく舌打ちしてたっけ。
もう限界、と何度も思いながら一度だけ私はとうとう海李先輩にメッセージを送ってしまった。
”何してますか?”
散々悩んだけれど、色々フラストレーションが溜まっていたから海李先輩の返信が来たら元気になれる気がしたけれど、そのメッセージは数時間後既読がついたけれど、それから数日返信はなかった。



