人魚のティアドロップ

「ホンッとムカつく!蒼空のヤツ!」と早速智花に電話を掛けると

『見慣れないからそう言ってるだけじゃない?てか蒼空くんてちょっとシスコン入ってるじゃん。これ以上美海が可愛くなったらって嫉妬してるんじゃない?』

智花は別れたときより少し元気を取り戻したのか元来の朗らかさを取り戻していた。

「シスコン?ないない。あいつはあたしを蹴落とすことだけしか考えてないもん」

『蹴落とすなんて。いい子じゃん。蒼空くん』

「それは智花が……」可愛いから。

どうせきれいな年上のおねーさんに憧れてるだけでしょ。

「それより智花、体調は大丈夫?」

『体調?』

「うん、さっき具合悪そうだったけど」

『そう?全然大丈夫だけど』と智花の返事はケロリとしていた。『まぁメイクなんて練習あるのみだよ。すぐにうまくしようとしないで、徐々に頑張っていこ』とありがたーいアドバイス。

智花の言う通りだ。最初から何もかもうまくできたらそれこそメイクアップアーティストなんていなくなっちゃう。

智花と電話を切り、私は明日海李先輩に教える勉強の資料をそろえることにした。基礎って言っても一年のしかないけど、これで大丈夫かなぁと不安もあったけれど、また海李先輩を会えるのが楽しみでこの日もあまり眠れなかった。

翌日、せっかく智花にメイクを教えてくれたから軽く淡いピンクのシャドウと同じ系統の色のグロスだけを塗って登校した。

「おはよ~」と友達と挨拶を交わしているうちに

「あれ?美海ちょっと化粧してる?可愛い~」と一人の友達に言われたとき、ちょっと嬉しかった。

早く放課後にならないかな。海李先輩は気づいてくれるかな。とその日の授業はあまり耳に入って来なかった。

そわそわと六限を終わらせ、私は慌てて図書室に向かった。図書室には本を読みに来た人や、同じく試験勉強をしにきたひとたちが数人いるだけで海李先輩はまだいなかった。流石に早かったかな。張り切り過ぎ?それともからかわれただけ?と不安がよぎったが

「美海、早かったな~」と頭をぽんと軽く叩かれて私の背後に海李先輩が現れた。

手にはノートと参考書がいくつか。ペン入れも持っている。

良かった、ちゃん現れたし、やる気はあるんだな。