その後、お目当てのメイク用品をいくつか買えたけれど、智花はさっきの楽しさからどこかぎこちなく無理をしているように見えた。
どうしたんだろう。さっきまで元気だったのに。具合でも悪くなったのかな。
ここまで付き合ってもらったし、これ以上無理に付き合わせるのも良くないと思い
「じゃぁ智花。付き合ってくれてありがと。うちで頑張って練習してみるよ」と暗にお別れの意思を見せると
「うん、頑張って」と、智花がぎこちなく笑う。
そうして別れた私たち。家の部屋にこもってお母さんが「美海~ご飯よ~」と言う掛け声すら気づかず勉強もそっちのけでメイクの練習に没頭した。最初は智花がやってくれたみたいにきれいにできなかったけれど、二回、三回と繰り返していくと
「うん、それなりに……見えるかな…?」
と鏡の中でしかめっ面。
「美海!」と母親に扉を開けられそうになったとき、慌ててメイク用具を片付けて机に向かって勉強しているフリ。
「あら、勉強してたの?ごめんね」
「う、ううん。ちょっと集中してたみたい。何?」
「晩御飯できたわよ」
「分かった、下に行く」と言って解いてもいない参考書を閉じた。
ダイニングテーブルにはすでに蒼空が居てつまらさそうにスマホを触っていた。お父さんは帰りが遅くなるからいつも夕飯はこのメンバー。
「おっせーよ」
「ごめん、勉強してた」完全なる嘘だ。
「蒼空、あんたもお姉ちゃんを見習ってちゃんと勉強しなさいよ」と母親がクリームシチューをよそいながら蒼空を睨む。
「分かってるって。てか何かと姉ちゃんと比べるの辞めろよ」
「まったく、同じ姉弟なのに何でこんなに違うのか」と母親は小さくため息。というものの蒼空の成績は学年でも下から数えた方が早いぐらいのレベル。お母さんがため息をつくのは分かる気がする。
ごめんなさい、私勉強はしてなかったです。と心の中で小さく謝罪。
「てか姉ちゃん化粧してね?」と蒼空に指摘され
「う、うん。今日智花んちに一緒に勉強しにいったとき休憩がてら試してみたの。似合う?」と聞いてみると
「全然、似合わない」と蒼空が即得。
ガーン……
あんなに頑張って練習したのに。
「智花姉ちゃんは可愛いから似合うけど姉貴がやってもな~」と蒼空が意地悪く笑う。
悪かったわね。私はどうせ智花みたいに可愛くなれないわよ。



