相手は海李先輩だった。
「わ!わわっ!」
まさか海李先輩の方からメッセージが来るなんて思ってなかったからちょっと驚いて、スマホが私の手の中で踊る。
恐る恐る……まるで爆弾処理班になった気分でメッセージを開くと、
”さっきはごめんな、遅くまで引っ張って。お母さんに怒られなかったか?大丈夫?”と私を心配してくれる内容だった。
単なる遊び―――だとは思いたくないよ。
”大丈夫です。適当に言い訳しておいたので。心配ありがとうございます”
散々悩んだ末ちょっとそっけないかな、と言うぐらいの内容になってしまった。
でもいきなり馴れ馴れしいのも引かれるかもしれないし。
先輩に嫌われたくない。
一度寝たぐらいで彼女面するなよ?とかは言ってこないと思うけど、そう思われたらそれこそ泡になって消えてしまいたい。
だからこれぐらいの距離がちょうどいい気がした。
その晩は眠れなかった。スマホを胸に抱いたまま、たまに海李先輩のメッセージを読み返してみる。
”そっかそれなら良かったのか?まぁまた何か言われたら俺に言えよ?ちゃんと謝りに行くから”
”ありがとうございます。先輩もゆっくり休んでください。おやすみなさい”
”おやすみ”
と言う流れだった。短いラリーとも言えないメッセージのやり取りを何度も見返しながらゴロゴロと布団の中で身もだえる。
そんなことを続けているとあっという間に朝になってしまった。
次の日、この日珍しく他クラスの智花に昼食を誘われた。私はお母さんが作ってくれたお弁当。智花はコンビニで買ってきたであろうサンドイッチ。智花の家は共働きでお母さんはバリバリのキャリアウーマンだから朝は智花がトーストを焼くけれど昼ごはんまでは手が届かないそう。
何か話したい事があるのだろうか、智花は屋上に私を誘ってきた。
屋上は数人の男子が雑談してるぐらいで、意外と静かなものだ。屋上の地面にハンカチを敷いてスカートが汚れないように、私たちはそこに腰を下ろした。
「最近どお?」と智花から切り出され、何のことをさしているのか分からず
「どうって何が?」ときょとんとしていると
「沙羅先輩の苛めだよ。昨日も片付けさせられてたでしょ。ホントは手伝いたかったけどコーチに呼ばれちゃって」
「……ああ…」そっちのこと。
私は小さくため息を吐くと
「まぁ相変わらずだよ。でも可愛い程度じゃない?辞めさせたいわけじゃなさそうだし」と苦笑いを浮かべると
「そっかぁ?悪意たっぷりに見えるよ」智花が顔を歪める。
心配してくれてるのは嬉しいが、私は話題を変えるため
「智花はどう?憧れのアーティスティック」
「うーん……思ってたより難しい……あたしあんま柔軟性がないみたいで…他の子は小さいころバレエやってたりとか経験があるけれどあたしはそんな経験もないし」
そっか……バレエか…そこまで考えが及ばなかった。
「ま、柔軟運動がんばってとりあえずは体を柔らかくすることから始めようってコーチが言ってくれて」
「お互い大変だね」とふと智花の横顔を見ると、その顔にうっすらメイクが乗っていた。
それは智花の可愛さを一段と際立てていて、とてもきれいだった。



