それからは当たり障りのない話をしてあっという間に時間は過ぎていった。
それすらも楽しくてテーブルに置いたスマホが着信を報せたのを気づいたら夜の11時を回っていた。
え!?
案の定家からの電話で母親から
『美海!あんた今何時だと思ってるの!』と開口一番に叱られた。
「ごめん、ちょっと自主練してたら遅くなっちゃった」とちっちゃな嘘をついた。
『今すぐ帰ってきなさい』と当然のごとく言われ、「はい」と素直に頷くを得ない。
電話を切ってすぐ
「悪い、こんな時間まで引っ張って。俺送って行くから美海のお母さんにちゃんと謝るよ。俺が引っ張りましたって」
「え!いや、そこまでしてくれなくて大丈夫ですよ。子供じゃないんだし」と慌てて手を振ると
「じゃぁせめて送ってく。危ねーから」と言い出してくれた。
まだ海李先輩と居られると思うだけで私はちょっと嬉しかった。しかも海李先輩は私を”女”扱いしてくれる。どーでもいい相手だったらここでさよならだよね。私、ちょっと己惚れていいかな…
先輩は宣言通り家まで送ってくれた。
「へー、いい家住んでんな」とどこからどう見ても普通の一軒家を見て先輩は目をぱちぱち。
「どこがですか、ここは建売住宅だから似たような家ばかりですよ?築年数も経ってるし」
「俺んとこよりはるかにいいって。それより本当に謝らなくていいのか?」
「大丈夫です。適当に言い訳するから」
先輩になるべく負担をかけたくない。重い女になりたくない。何より今日のことを責任に思ってほしくない。
私の中の感情はぐちゃぐちゃと色んな言い訳を考えているけれど、ホントのところはお母さんに今まで男の子と居たって言われたら今度から海李先輩と会えなさそうだったから。
「そっかぁ?じゃぁまた何かあったら連絡しろよ」先輩はスマホをふりふりして背を向けた。
「送ってくれてありがとうございました」
「おう、また明日な」
また明日―――
この日の私はそれが永遠に続く気がしていた。



