「なぁ連絡先交換しねぇ?」と言い出したのは先輩の方だった。
「え?」
思わぬ発言に目を大きく開くと
「いや、迷惑ならいいんだけど」
「ぜ、全然迷惑じゃないです!」むしろ嬉しい!私はスクールバッグからピンクのカバーをつけたスマホを取り出し、先輩もすぐにカバーのついていない黒いスマホを取り出した。
ちらりと見えた。先輩のスマホの待ち受け画面はどこかの海の風景だった。私の待ち受けは今流行っているキャラクターのイラストが描かれていたからちょっと恥ずかしくて慌ててロック解除した。
お互いQRコードを読み込み、先輩の連絡先が私のスマホに移った。
「高井戸 海李?」
これが先輩の本名。ずっとかいり先輩ってどんな字を書くかと気になってたけど。
「横井 美海?すっげぇ偶然。俺ら”海”って文字が入ってるんだな」先輩は子供のようにわくわくと笑った。
ホントだ。偶然……だけど何だかすごく嬉しい。先輩と一部を共有できたみたいで。
「あ、だから海?」
「え?」
「あ……すみません。さっきロック画面見えちゃって。どこかの海かなーって」
「そ。最初で最後親子三人で行った沖縄旅行のときの海の写真」先輩の横顔に少し翳りが見えた気がした。
聞いちゃいけないことだったのかな。ここで初めて小さな沈黙が流れた。それは先輩のロック画面の海のようなきれいな色ではなく、先輩のドリンクバーのグラスに入ったアイスコーヒーのような色をしている。
「あ、あたしなんて子供っぽいキャラクターものです」バラしたくないけれど、この微妙な空気を何とかしたくて私はロック画面を見せた。
そのキャラクターは今流行っているうさぎだか猫だかどっちつかずのふわふわした毛に黒い目とちょっと間抜けにも見える笑顔を浮かべた謎の生き物。
「可愛いじゃん。いかにも美海らしい」
「そ、そんなに子供っぽいですか?」
「ううん、素直に可愛いって思っただけ」
可愛い……先輩の口から聞くと特別に思えるよ。一瞬変えようとかと思ったケドこのままにしておこう。



