「先輩、今度の日曜日、デートしませんか?」



ある日の帰り道、隣を歩いていた蒼空にそう誘われて思わず歩みを止めてしまう。



「で、デート⋯⋯」



それって、あの、恋人同士の特別なお出かけのこと⋯⋯だよね。




「はい!⋯⋯って、先輩もいろいろ忙しいですよねっ、すみません、忘れてくださ⋯⋯」


「あっ、ううん、違うの!その⋯⋯蒼空とのデート、初めてだなぁって、思って⋯⋯」



付き合って1ヶ月くらい経っているけど、私達はデートというデートをしたことがない。


だからか、こんな風に直球に誘われると少し照れてしまう。



「確かに、そうでうね⋯⋯夕真先輩、俺とデート、してくれますか?」


「⋯⋯っ、そ、そんなこと聞かなくても⋯⋯」



するわよ、と言おうとしたところで、香菜ちゃんの言葉を思い出した。


『先輩ツンデレですもんね』


⋯⋯っ。



「し、したい、です⋯⋯」


「へっ⋯⋯?」



私の返事が予想外だったのか、穴が空くんじゃないかってくらい私を見つめるから、思わず両手で顔を隠す。


い、いきなりこんな事言うんじゃなかった⋯⋯っ。


ど、どうしよう、蒼空が求めてる彼女はこんなんじゃないのかもしれない⋯⋯。



「先輩⋯⋯かわいいですね⋯⋯」


「⋯⋯へ?」



おそるおそる顔を上げると、顔を真赤にしながらも嬉しそうにはにかんでいる蒼空がいた。



「先輩がはっきり言ってくれるのレアですよね⋯⋯、嬉しいですっ」


「そ、それは⋯⋯よかった、です⋯⋯」



やっぱり、ちゃんと伝える方が蒼空も嬉しいんだよね……っ、これからも、頑張ってみようかな……。