なぜか興奮しだした山口の、見に行こうよ!という提案に、早速昼休みに2年生の校舎に足を運ぶ。



「夕真先輩と仲が良いってことはイケメンよね?運がよかったらお近づきになれるかも!」



なんだ、イケメン狙いか。


そういえば山口が重度のイケメン好きなこと忘れてた。



「あ、あの人」


「⋯⋯あの窓辺に立ってる人?」



山口の言葉に頷きながら、俺の目は自然と夕真先輩の方に惹かれていた。


夕真先輩は、自分の席に座りながらなにかの本を真剣に読んでいる。


多分料理の本なんだろうな。


来週は先輩が当番だから、レシピ考えてるのかも。


先輩が買い出しのとき、俺もついていこうかな。



「これだけ見ると、別に仲良さそうには見えないわね」


「そうなんだけど⋯⋯ほんとに仲良さそうに話してるんだよ!」



付き合う前のアピール期間、あの先輩にどれだけ心を乱されたか⋯⋯考えたくもない。



「あ、例のイケメン先輩が動いたっ」


「え、まじ?」



山口が指差す方を見ると、本当に動いているし、しかも行き先は夕真先輩の方。



「なに、話してるんだろうね」


「⋯⋯ん」



イケメン先輩が何かを言うと、夕真先輩はくすくすと笑う。


そうしたやり取りを数分間黙って見ていたけど、限界が来て何も言わずに校舎を出る。



「山﨑くんっ!」



すぐに追いかけてきた山口の方を向く気力もなくて、傍にあったベンチに腰を下ろす。



「山口も見たでしょ⋯⋯?あの2人、仲良さそうなの」


「見たけど⋯見たけどさ、今、真田先輩の彼氏は山﨑くんじゃん。それだけであのイケメン先輩よりリードしてるって!」


「ほんとにそう思う……?」



山口の言葉に安心しつつも、自分よりかっこよくて落ち着いた雰囲気のあの先輩が頭に浮かんで、また気分が下がる。



「……そんなに心配なら、本人に聞いてみればいいんじゃない?」



そんなこと出来たらこんなに悩んでないっつーの……。



「俺のこと好きですか?って?頭おかしいヤツじゃん……やだよ……それで好きって返ってこなくても辛いし……」


「それに関しては何も言えないけど、あのイケメン先輩が真田先輩と付き合うことはないから!絶対!」


「……なんで確信持って言えるの?」



何か知ってるのかと思ったけど、すぐに首を振ったから、そうでは無いらしい。



「とにかく、私もそれとなく聞いてみるから、あんたはあんまり気にしすぎずに真田先輩に愛を伝えまくりなさいよ?」


「…そんなの、言われなくてもわかってる」